第2話 ギャンブルはここぞという時に
「お疲れ様です~」
今日は30分程の残業で終わった。
早めの終わりだとついつい寄り道したくなってしまうのです。
でもまぁ、今日はまっすぐ帰るか!
2月の中旬はまだまだ寒いし、
日の落ちるのも早い。
さっさと電車に乗ってしまおうと駅に向かった。
「ねぇ、悪さん~。起きて~!」
「あ、ん~?もう夜か~早いのう」
僕らは食事はしなくてもいいんだけど、睡眠は取らないと魔力がなくなってしまう。
逆に言えば睡眠さえ取れば回復するので霊体を保っていられる。
ま、この30年ほどは何もしてい無いに等しいので寝る必要ないぐらい魔力満タンですが。
「今日はね、僕決心したんだけど、ちょっと聞いてくれない?悪さん、耳貸して!」
ごにょごにょごにょ、、、
って誰も内緒話しなくても僕らの声なんて聞いてないと思うけど、
なぜかしちゃったよね。えへへ。
「本気かお前?彼女の性格を知ってるじゃろ。それでも頑なに認めなかったらわしらアウトじゃぞ。」
「でもね、これしかないし、これだとちょっとやる気にもなってくれないかなって。待ってたら、もう少ししたら暖かくなってしまう。タイムリミットだよ。」
「30年付き合ってきて無視を決める頑固者がこんなことで認めるかね?」
「でもなんか僕行けそうな気がする~」
「お前のポジティブでわしを巻き込むな、、、」
「待っててもどうしようもないよ。これでアウトなら諦めようよ。諦めきれないけど。そもそも彼女は全然関係ないんだし、協力を求める僕らの勝手だもん。悔しいけど。大丈夫。この前天空協会に相談に行ったとき、気づかない人間なんて例外すぎるった言ってたよ。もしかしたらまたチャンス貰えるかもしれないし!」
僕はポジティブに笑顔で言った。
僕がポジティブでなきゃ、悪さんは余計に不安がるから。
「お前の言う通り、時間がないのは確かじゃ。まぁ30年やってきたしな、お前を信じてもよかろう。これで認めないというのなら、こやつはもう使えん。」
やりとりをしてるうちに、彼女は改札を通っていた。
帰宅ラッシュの中、いつもどおり
SNSを流しみる。
あ~疲れた~。
ふとLINEが来た。
「あ、クロからや!」
クロは高校の時からの同級生。
わたしより先にこちらに引っ越していた。
大阪にいた頃は、
長期休みがあればクロのところへ
遊びに来ていた。
今では家が近くなり、たまにご飯に行く。
趣味もよく合うので、
ごはんからのカラオケが基本コースだ。
『今日ひま?ごはんいかん?』
一瞬考えた。
旦那さんに言わないと、、、
「そう!そうだよ!旦那さんに言わないといけないし今日は帰ろうよ!?ね!??」
僕は必死に話しかけた。
さっき言っていた作戦、
このままご飯に行かれたらできなくなってしまうかもしれないからだ。
「お前!今日は早く帰るんじゃなかったのか!?ほら、今日は早く帰るんじゃ!!」
悪も必死に訴えかける。
うるっさいな。
なんであんたらにそんなこと言われなあかんのよっ。
たまにのごはんやねんからええやん!
無視。はい、無視無視ムシ!
旦那さんに連絡しよ~っと!
『お疲れ様!クロちゃんにご飯誘われたので晩ご飯は食べて帰ります。ごめんね!』
ささっと旦那さんにLINE送信!
返事は『お疲れ様~わかった!』ときた。
そしてクロちゃんにも返信や!
『ええよ~!どこ行く~??』
なんか行くなって言われたら余計腹立ってきて断りたくなくなる!!
「ああああ~もうなんて融通のきかなさ!そして僕らの運の無さよ!でも負けないからね!今日はぜったいの絶対!!」
「やっぱり運がないのかのう...まぁそうでなければあんな死に方...」
「何をネガティブな!二度とあんな目はごめんだって誓ったじゃん!諦めないよ。ご飯に行くだけでしょ!?大丈夫!!!」
またしても悪さんはもうネガティブ全開。
でも僕は今日という今日はなにがなんでも諦めない。
たとえ彼女の友人を使ってでも認めさせてやる!
待ち合わせは錦糸町。
今日は寒いので鍋を食べよう!ということになったらしい。
「お疲れ~!遅なってごめんな~」
クロは改札の外で待ってくれてた。
いつもわたしの方が遅れることが多い。
「お疲れっ!行こか~」
2人で駅近くのもつ鍋屋さんへ。
クロは何度か行ってるみたいだけど、わたしははじめてだった。
店に入ってクロはグレープフルーツチューハイ、わたしは梅酒ソーダを注文。
鍋が準備され、くつくつと煮え始める。
「最近どうなん新しい職場!」
「そやな~、、、」
とたわいもない話をする。
そんなこんなでいつものカラオケ行こう!のコースへ。
「あ~やっぱりそうだよね。そうなるよね~。」
「いつもの事じゃろうが。まぁ終電前までカラオケじゃよ。こうやって今日も終わるのじゃ!」
「そんなことない、今日はなんとかするもん!」
「賭けてもいいぞ?今日なにもできないにプリン1個!」
「い~や、僕はできるにプリン2個!」
どうしてプリンかっていうと、彼女の家にプリンがあったからだ。
冷蔵庫のプリン。
僕らは食べなくてもいいんだけど、食べることも出来る。
当然食べてしまえばなくなるんだけど、あの家ではなんとなくなくなってしまった食べ物は
『知らないうちに食べてしまったのかも!』
とか
『もしかして捨ててしまった!?』
とか勝手な思い込みをしてくれるので
あまり問題にならない。
なんて適当なんだ、と思いつつ僕らはそこに救われている。
だってプリンおいしいんだもん。
彼女たちが眠ってから夜な夜な食べているのです...
カラオケも盛り上がってきた午後10時半前。
もうそろそろ帰らないのか?まだなのか?
今日はもうダメなのか!?
僕はそろそろ不安になってきた。
別に日付が変わってもできないことではないけど、今日やるって言っちゃったもんで
プリンの賭けも負けたくない。
彼女は突然立ちだし、部屋を出た。
トイレだ!!!トイレに出たんだ!!!
え?飲み物か?
いや、コップ持ってないからトイレだぁぁぁぁあ!!!!
僕はチャンスだと思った!!!
「ん?お前どうしたんじゃ?興奮して」
「トイレだ!チャンスだぁ!僕ずっと考えてたんだ~。作戦変更~!」
「え?!変更!?わし聞いとらんぞ!!は?」
「いいからいいから~信じて僕を!」
「いやいや、一大事なのに信じてもクソもあるか!先に説明するんじゃ!」
「そんな時間ないよ!あ、トイレ入った!!」
僕はカラオケの部屋で彼女達の歌を聴きながら覚悟を決めてたんだ。
これしかないって!
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