　餌をつけて１５分後、竿がしなり大物の予感がした。それを見て池田が間髪を

入れず、「わーすごい引きですね」と言った。笑顔で「釣ってからだ」と返した。

　１０分位して、引きが弱くなったので、どんどんリールを巻き、大きな魚影が

姿を現し、大きな真鯛だったので、今井社長は大興奮、「真鯛だー」と叫んだ。最後はゆっくり、あげたところを、たも網で池田がすくい、今井社長の所へ持ってきた。３０ｃｍ越の大きな真鯛で、大喜びだった｡

　今井社長が、池田に向かって、「あんたは福の神じゃ」といって肩をたたいてくれた。また、餌をつけて、釣り糸を投げれた。他の人達は、鰺やタコが多く、なかなか大物は釣れなかった。そのうちまた、今井社長に当たりがきた、先ほどのような強い引きではないが、結構つよい引きで、一度、糸を緩め、魚が疲れるのを待った。１０分位で弱った様で、急いで糸を巻いてみると、「黒い斑点の模様が見え、石鯛かイシガキダイのようだ」船長に言われた今井社長が、「いや、まぐれ、まぐれですよ」とうれしそうに笑った。

　それを見ていた山北社長が、鯛２匹ですか、すごいですねと誉め上がげると、まんざらでもなさそうに、「今日は、君の連れてきた、池田君が、僕の福の神だ」と言い、「また連れてきてよ」と言ってくれた。そして、３時間が過ぎて、船宿に帰って、解散となった。今井社長が、「池田に名刺頂戴」と言い、「僕の会社にもセールスにきて良い」と言ってくれた。その代わり、「また一緒に釣りをつき合ってくれよな」と、肩をたたかれた。承知しました、「またお供させていただきます」と、笑顔で答えた。

　数日後、池田が今井社長の会社を訪ねたところ、歓待してくれ、我が社は、今も、発展中で、首都圏中心に横浜、東京、世田谷、川崎、大宮、千葉に支店があると話してくれた。そして、私が釣り好きなので、「釣り同好会もあるので、良かったら参加しないか」と誘われた。是非お願いしますと言うと、釣りの日が決まりしだい、FAXを入れるよと言ってくれた。そうして、「仕事の邪魔にならない程度で、挨拶して良い」、また、「昼休みに若い社員が出てくるから、営業活動して良いよと」、小さな声で、そっとささやいた。

　昼まで待って、若い社員さんに、名刺とパンフレットを渡すと２人ほど、「まだ、保険に入っていないんだけれど、私に合った商品を紹介して」と言われ、「次回、おすすめの商品のパンフレットして欲しい」と言われた。「年齢、既婚、未婚、近い将来結婚の予定、親との同居か否か、車持ってるかどうか」を数分で聞き、メモした。数日後、再び、昼頃に今井産業を訪問して、保険商品の企画を依頼された２人に、それぞれ３つの商品のパンフレットとその特長、支払い金額と保証金額がわかる書類を渡して、検討してくれるようにお願いした。それを見ていた今井社長が一緒に昼食に行こうと誘われ、お供した。その席に、会社の釣り同好会の会長の吉本営業部長がおられ、紹介してくれた。すると、「彼が、社長の福の神ですか」と笑いながら言った。