#043:衝撃な(あるいは、ブラックアウト)

 悪夢の夜が明け、金曜午前10時。


 また来てくれ、と言ってくれたオーリューさんに御礼と別れを告げ、溜王戦への準備が全て整った僕らは、一路、東京への帰路につくのであった。アオナギの運転でセレナは快調に山道を下っていっている。


「うーん、でもほんと横から見ても美少女メイドって感じよぉん。ムロっちゃんもそっち方面に転向したらモテまくりなのにぃ」


 作業は終了したので、僕もジョリーさんも後部座席に今日は並んで腰掛けている。僕は着替えも用意していなかったし、あの旅館の浴衣のままというわけにもいかないので、しょうがなく紅のメイド服一式を身につけている。あくまでしょうがなく、だけどね。でも、そっち方面とは……考えただけでも怖気が這い上ってくるので無心を貫く。この格好だけは気にいっているのだけれど。


「……」


 一時間余りで仙台市内まで戻ってきた僕らは、そのまま東北道で福島を目指す。昨日までの疲れがどっと吹き出したか、僕は心地よい揺れに一気に眠りの世界へと誘われた。


「……岬くん?」


 甘い声で囁くのは誰だ? 僕は何か白い靄に包まれた心地よく暖かい場所に来ているようだ。


「こないだはごめんね。私……タメイドに騙されていたの」


 初摩ハツマ……アヤさん。僕の目の前にゆらり浮かんでいる。そのたおやかな体は、何というかギリシャっぽい神々とか天使とかが着ていそうな、白く長い布を巻きつけたような服を纏っていた。何だ、やっぱり天使だったんだ。


「岬くん……私のこと許してくれる?」


 切なそうな瞳で今にも泣き出しそうな……このヒトを悲しませる、その元凶は何だ? ……僕だ。


「許しを乞わなければならないのは自分の方です。あなたを……悲しませてしまうなんてっ……!!」


 ついにその美しい瞳からきらびやかな輝きを持った雫が降り落ちてしまう。僕は、僕はどうしたらいい? どうしたらいいと言うんだっ。


「岬くん……私、あなたのことが……」


 いい……香りがする。肩に両手をかけられ、顔と顔がすぐそばまで接近している。


「アヤさん。自分も、出逢った時から、アヤさんのことを……」


 僕から言わねば。思いのたけをぶつけるんだ。ぶつけ……ぶつけ……るっ!? のわあっ!!


「何だぁ!?」

「ちょっとぉっ!! カマ掘られた?」

「そんなレベルじゃねえぇぇぇ!! 思くそブッ込んできやがったぜぇあ!?」


 突き上げる衝撃と、怒号と悲鳴に、僕は叩き起こされた。


「まずいぜ!! ぶつか……」


 次の瞬間、さらなる衝撃が僕らを襲う。何だ? 何が起きたっていう……ん……だ。僕の頭は混乱を来たしたまま、それきり、真っ暗にな


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