生け贄2人目
「仕事始まるよー」
待機室で、友人に呼ばれて私は資料から目をあげる。今日もいつも通り営業にいく。
でも、今日の担当はお堅い会社なのだ。
せめて、早く終わらせようと、資料には穴があくまで読んだと思う。
友人とふたりで、外に出た。
ふと、なにか変な気分を味わう。
さりげなく周りを見渡すと、空に。
何かある
「ちょっと、燐子ー、ボッーとしてないで早く行くよー」
「あー、ごめんごめん」
「なに、空見上げてぼけーとしてんのよー、そんなにあの会社嫌なの?」
友人は、空を見上げながらそう言った。そう、空を見上げながら。
「ねぇ、あの空に太陽と月以外に、ほら、あそこら辺に、なんかない?」
指を懸命に伸ばして説明してみる。
「はぁ?なんもないよ、ちょっと疲れてんじゃない?今日は私が1人でやろうか?」
「えっ?」
「いや、だから、疲れてるなら帰って休んだ方がいいよ。」
「あれ、見えてない?」
「あれとか、それが何かはわかんないけど、燐子が疲れてるのはよく分かった。無駄な心配はしないで今日は帰りなよ。上には言っといてやるからさ。」
「………………。」
…見えてないのか。
じぁ、あれ何?
なんで私だけ見えてるの?
いやいやその前にさ。
「疲れてるかも〜。でも、ちょっと休めば大丈夫だと思う」
「そっかぁ、変な事言い出した時はどうしようかと思ったけど、んじゃ、ちょいと休憩してから行きますかぁ。」
そう、友人が言って私達は近くの喫茶店で1時間程時間を潰してから、営業先へ向かうことにした。(最初は、2時間前に現場入りしようと思っていたのだ。)
「それより、燐子、さっきの何?どうしたの?」
「あー、んー、なんでもない。」
あんな変なものは私の日常には必要ない。そもそも本当に疲れていて幻覚が見えているだけかもしれないのだ。過剰に意識することでもあるまい。
たわいもない話をして、私達は喫茶店を出た。営業先へ向かっている途中は空を見ないことにした。今日は、晴れている。それだけで十分だ。(営業と言えば、無事に終わった。)
だけど、私はこの後空にある何かを真剣に考え早期対処しなかったことを後悔する。(誰が空に浮かぶ未確認飛行物体を処理しようと思うのか)
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