第81話 映画「響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ」(2019)詳細分析PART2

全3回。第2回は1年生求・美玲・さつき編。


SPOILER ALERT:劇中の核心に関わる内容について触れてます。






月永つきながもとむ


・低音パート練の教室で初登場。既に川島かわしま緑輝さふぁいあは話をしており龍聖学園中等部からエスカレーター進学せずに北宇治に来た事、コントラバス奏者である事が明かされる。求は先輩や同級生に向けていきなり「求と呼んで欲しい」と要求して低音パートの他のメンバーが驚く事になる。

・求はのちにみどりに弟子入り。彼女だけ師匠として崇め奉っている。そんな求と秀一は会話が出来ているが、秀一曰く「人間だから出来るだろう?」という。ここは久美子と違う性格の持ち主らしい台詞。

・関西大会の会場入り前に久美子が龍聖学園高等部と源ちゃん先生を見た時に求の方を見ている(求は他の男子部員と話し込んでいて龍聖に気づいてない)。原作「最終楽章前編」にも似たようなシーンがあるが、この段階では久美子はある事実の可能性を疑っていないように見えた。



鈴木すずき美玲みれい鈴木すずきさつき


・楽器振り分け。東中出身の鈴木さつきはすぐ人の話題に飛び込んで来る。南中出身の鈴木美玲は少し話のテンポが遅い。それ故にさつきと一緒だと会話を取られてしまう。そんな二人の関係が葉月との会話の中で既に起きている。


・低音パートでの部活の説明はちょっとブラックさはある。久美子にしろ梨子にしろ「みんな少し早く来て音出しをしているよ」と言う。それに対して鈴木美玲は早朝練習や居残り練習が義務なのか確認している。原作「最終楽章前編」では2年生になっている鈴木美玲は1年生部員に対して効率的な練習以外は無駄という信念を示しているが、入部時点で既に子の考えを持っているらしい事が分かる。その事が最初に顔をのぞかせたシーンだった。

・1年生だけ集められたミーティング、指導係の久美子が行った説明ではコンクールメンバーのオーディションについて2、3年生先輩への情実があるのか確認をしている(奏が質問を補足しており、奏の出来る子を好む性格も表されている)。久美子は躊躇したが3年の加部先輩は迷わず「ない」と言い切った。優子や加部友恵が1年生だった時に起きた大量退部事件は未だに尾を引いている。


・美玲は時間内の練習で上達をしている。だから時間外の早朝練や居残り練を認めない。でもそういう姿勢が低音パート内で認められると思えていない。

・さつきは下手だが人の会話に入り込むのが上手い。そしてそのさつきに何回も会話を奪われてきたのが美玲なのではないか。小学生まで遡るかも知れない。


・久美子と麗奈が洗い場でマウスピースを洗っていたのを見た美玲は「近い」と感じて口にしている。麗奈も久美子も別に他人に言われるような事とは思っていないので動じない。こういう関係について気になるけど自身の周りにはないのが美玲(さつきにしたらこういう関係のつもりでいるとは思う)。


・校庭での行進練習。さつきと葉月は演奏に気取られて足が合わない。そしてパートリーダーの後藤卓也から注意されるとさつきは葉月の足を引っ張ってるからと謝り、葉月はそんな事はないよという。それを見ているだけで会話に加われない美玲を危惧した梨子が美玲に話しかけた所、またもやさつきが話に加わろうとして「みっちゃん」と呼んできた事から美玲の怒りを招いた。

「みっちゃん」と呼ばれる事が直接の問題ではない。美玲は会話に割り込まれるのを嫌っている。


・行進練習後、奏は水筒を久美子に勧める。木が二人を隔てて見せる中で久美子は受け取って飲んだ。そこで奏は「上手いけど時間外の練習はしない美玲と下手だけど熱心に時間外も練習するさつきのどちらが好きか?」という尋問を久美子に始める。

久美子はすぐ警戒してうわべな返事をして奏の意図に気付いている事を奏に示した上で美玲とさつき二人ともいいところがあると伝える。奏はそんな久美子の回答に「ずるくないですか?」と言ったが追求は諦めた。


・サンフェス当日。葉月が美玲のベルの角度を直してあげようとしたところピリピリしていた美玲がその手を払いのけてしまう。そしてさつきが「みっちゃんは先輩に失礼」と怒り出した時、美玲は「みっちゃん」の言葉に反応してさつきに対しても怒りスーザフォンを放り出して吹部を辞めると言い出す。

・陸上競技場の端に駆け出す美玲。後を追う久美子と奏。倉庫Bの影に入った美玲に駆け寄った奏は「美玲は悪くない」と言って美玲を自分の陣営に引き込もうとした。奏は美玲が折れて変わる必要がないと信じてる。奏の目には変わるべきは葉月とさつきの二人のように映っている。

・久美子は美玲に余計な事を言って奏に呆れられつつも美玲に「みっちゃんと呼んで貰えばいい」という処方箋を出した。影からひなたの久美子のそばに出てきた美玲は久美子に「まず先輩から」と頼み何回か「みっちゃん」と言ってもらって覚悟を決めて戻った。

・久美子の出した処方箋、最初に謝らなくていいという事が最大の眼目だったのだと思う。「これからはみっちゃんと呼んで下さい」という事で会話し易いようにきっかけを作ったに過ぎない。でもそれで充分だった。


(続く)

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