第77話 映画「さよならの朝に約束の花をかざろう」(2018)年単位の時間経過描写の難しさ

映画「さよならの朝に約束の花をかざろう」

・織物で記録を残す長命族の村が龍を操る軍の奇襲攻撃を受けた。偶然村を遠く離れた場所に落ちてしまった15歳の少女マキアはそこで盗賊に襲われて全員殺されたキャラバンからたった一人の生き残りである赤ちゃんを見つけ育てる決心をした。

・監督・脚本;岡田麿里



SPOILER ALERT:以下、映画の核心に触れる部分があります。








 プロットは絶品。マキアとエリアル、そして王の元に連れ去られたレイリアとその子、村を襲われる前に戻したがったメドメルの年代記は面白い。

 問題は見せ方。マキアたち長命種族は見た目で時間経過が分からない。エリアルは赤ちゃん、幼児と成長するところで時間経過が分かるがティーンエイジャーに入ってから見分けがつかなくなるため事態が曖昧になる。年がわかる描写を入れるか、エリアルの年齢をもっと明瞭にする必要があったのではないか。


 エリアルの軍に入る理由、王都防衛戦での戦う理由などセリフで聞かされると本当にそんな理由なのかと思ってしまう。ディタを守るのなら家を離れるというのは理解し難いし、仲間を守るというには仲間との交流描写がない。職業軍人として仕事しますよでも良かったんじゃないか。どうも理が強すぎる。


 別れの一族、郷の外で愛してはいけないという長老の言葉は理になっているけど劇中で十分機能したと思えない。

 母親たろうとしたマキア、母親になるように仕向けられそして子を奪われたレイリアという二人の母親の物語となっている。レイリアが最後に叫んだ時、マキアはそれを自分の思いとして優しく否定した。そしてメドメルは何か吹っ切れた訳ですが何故そうなるのかはちょっと解釈しきれてない。

 マキアとエリアルの血のつながらない親子の愛は確実に描かれていた。別れの一族という設定は最後のマキアからエリアルへの言葉以外は意味を持ってない。でも息子と別れる母親の愛情は確実に描かれていた。


 物語が突出していてそれをアニメーションがしっかり支えた作品になっている。飲み込みにくい理に落ちたセリフもあるし、王都防衛戦でのレイリアやマキアの行動経過は納得し難いのですがそういう瑕疵をものともしない力強い物語がある。マキアの声の役、難しい面があると思うのですが合っていた。2018年度有数の長編アニメーション映画である事は間違いない。




時系列経過(推測)


・エリアル0歳、マキア15歳

 マキア、エリアルと出会い、ミドとラング兄弟の家に厄介になる。


・エリアル6歳、マキア21歳、レイリアがメドメル妊娠中

 メザーテ王都。レイリア奪還作戦失敗。マキア親子はメザーテを離れた。


・エリアル15歳、マキア30歳、メドメル8歳?

 鉄の街。エリアルは工場勤務からメザーテ軍に入隊。マキアはクリムに拉致された。


・エリアル20歳、マキア35歳、メドメル13歳?

 メザーテ王都陥落。エリアルとディタの間に子供が誕生。


・エリアル50〜60歳、マキア65〜75歳、エリアル娘30〜40歳、エリアル孫娘5〜8歳

 マキア、エリアルに別れを告げる。


年齢推測根拠:

・エリアル6歳=マキアを助けたイオルフと一般人のハーフの人物が言及している。

・エリアル15歳=ラングがエリアルに「マキアがお前の歳ぐらいの時に」と言及

・髪の毛はショートヘアから腰の位置まで60センチとしてそこまで延ばすと5年程度かかる。

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