第71話 映画「キャプテン・アメリカ ファースト・アベンジャー」(2011)アイアンマンと並ぶスーパーヒーローのリニューアル・アップデート

映画「キャプテン・アメリカ ファースト・アベンジャー」

・第二次世界大戦に突入したアメリカ。痩せていて身長も低く徴兵検査で「4F」の判定を受けてしまうスティーブ・ロジャース。父も母も献身の中で亡くなっていて見習いたいのに機会が与えられない。そんな中で科学実験部隊の超人兵士開発計画に志願が認められて献身的なスティーブに可能性を見出した博士によって候補者に選ばれたが---。

・監督:ジョー・ジョンストン

・脚本:クリストファー・マルクス、スティーブン・マクフィーリー



 アベンジャーズシリーズと密接に関わる始まりの作品の一つ。第二次世界大戦を背景にキャプテン・アメリカの誕生とヒドラとの関わりを描いている。


 戦争に兵士として検診したいと願う青年スティーブ。「ペリリュー・沖縄戦記」を書いたスレッジは士官養成学校に入っていたのに退校して海兵隊に兵士として入隊した。スティーブの心理はこれに近い(ただ彼は体格が足りず徴兵対象から外されている点が異なる)。

 そして彼が唯一の超人兵士になった時、国際募集の宣伝要員にされるあたりは「ザ・パシフィック」でガダルカナル島攻略戦で英雄となり国際募集に駆り出された海兵隊軍曹と重なる。


 不遇なスティーブが何故か欧州戦線の慰問に送り込まれ国内向けの国債募集的な売り込みをやり出したのは脚本家の人はいじめすぎじゃないかと思った。そのあとの展開を繋ごうとしたら慰問自体は外せないところなのだろう。こうしてようやくスティーブの戦いが始まり、戦友たちと一緒にヒドラ退治にかかる事になる。


 キャプテン・アメリカに欠けているのは勇躍戦争に参加した兵士が受けた心の傷だと思う。「ペリリュー・沖縄戦記」を書いたスレッジは戦争に行く前は狩猟を趣味としていたが、除隊後は2度とやろうとしなかったという。本自体、戦争体験のリハビリで書いたものとも聞く。

 その代わりにスティーブが負った傷は70年間も冷凍睡眠状態だった事で彼が属した世界を失った事にある。これはエージェント・カーターの消息や思い出の形でシリーズ作で触れられて行く。


 戦争の忌避感を持たない第二次世界大戦の英雄。まっすぐな正義を信じている。その一方で政府のやる事を鵜呑みにしたりせずトニー・スタークと衝突して行く事も辞さない。キャプテン・アメリカの源流を考えるとよくぞここまで現代に通用するキャラクターにアップデートしたものだと感心する。


 メインプロット自体に大きく関わることはないのですが「アベンジャー:エンドゲーム」に本作で出てきた要素が登場している。「エンドゲーム」は原点回帰した上で新たな未来を示す構図が埋め込まれている。それは身を捨てて果たした人もいれば、これまでの献身からふっと最後に果たしてない約束を果たしに戻る人もいる。スーパーヒーローがその荷を降ろした時、個人として何を果たしたのか描いてみせた。そこに人は涙するのだと思う。

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