泥人形
はやくはやくと急がせる
何処へと訊ねても
ただ、「はやく」とひとことだけ告げて
その不確かさに僕は途方にくれる
僕は周囲の速さについていけない
僕が急いでも
そんなの周囲の人にはまったく意味がなくて
だから
だからさ
ほうっておいてくれないか
おぼつかない足取りでついていくのも
足がすり減ってしまって限界だ
もうどこにも行きたくないんだ
うずくまって泥の中にしずんでいって
底なし沼にはまって鯰や泥鰌やそういったものになって
そうやって暮らしていくのが分相応だというのに
君は僕を人間扱いするから
いつまでも僕は泥人形の中途半端な姿で
よちよちと道を歩いている
(ああ、誰かこの七十二音を消してはくれないか)
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