夢のない話
いつからか欠けた月は欠けたままになった
有名な権威ある学者は
とうとう月の崩壊が始まったのだと得意げにいう
ぐるぐると地球の周りを高速回転しすぎて
限界に達したのだと
月は日に日に痩せ細る
新月になる日にはとうとう月は消えるだろう
まんまるお月さまから
蟹のはさみが消えていた
長い髪の女の面影も薄くなった
だから、うさぎも死んじゃったかもしれないね、
と望遠鏡を熱心に覗き込んでいた少年に声をかけると
月にうさぎなんかいないんだから、月がなくなったって別に変わらないさ
それよりぼくは月が消える瞬間に興味があるね
その日はずっと起きてていいでしょう、叔父さん
それを聞いた彼の叔父は
夢のない話ですねと僕に笑いかけてきた
僕は長い耳を切り取られた月を見ながら
まったくもってそのとおりです、と
言う他なかった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます