Break Time 心配事増える
「ただいまー」
残業で遅くなった。
ちょっといろいろ疲れたんで今日はもう打ち明ける気力は残ってないな、と思っていた。
ところが。
「おかえり」
妻の声が低く暗く湿っている。
顔を見てびっくりした。
マスクをしているが明らかに赤い。
しかもすでに寝間着。
「風邪ひいたのか」
「うん。ちょっと熱っぽくて」
妻は恐怖の健康優良児だった。付き合ってるころから普段はほとんど病気にかかっているのを見たことがない。ところが5年に一回ぐらい珍しく風邪をひくと、必ず寝込むまで悪化させる。いつも元気なだけに一旦風邪をひくと驚くほどもろい。
「起きてきちゃだめだろ。もう寝てきな」
「うん。あなたの晩御飯ないの。ごめん」
病人にご飯作ってもらおうなんて思う訳がない。
「そんなのいい、いい。明日、会社休むんだろ?」
「そのつもり。ごめん。先に寝るね」
「なんか欲しいもんとかある?」
「特には」
「薬飲んだ?」
「ううん、飲んでない」
「インフルかもしれないから飲まない方がいいか」
とりあえず、妻の手を引っ張ってベッドに寝かしつけた。
なんだよ、手、すげー熱いじゃん。こりゃ寝てなきゃだめだ。
ふとんをかけてやった。。
というか、なんか内緒でギターを衝動買いなんかした罰があたったみたいだ。
「ごめんね」
謝る妻に、謝らなきゃならんのは俺だよ、と心の中で呟いた。
再びスーツの上着を着こんでコンビニに向かう。
明日は妻にいつもの爽やかな笑顔が戻っていますように、と祈りながら。
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