Round1 不慣れなことをすると怪しまれる


「ただいまー」

「おかえり。メシ作っておいたから」

「えー?珍しいじゃない。どういう風の吹き回しよ……」


 そうは言っても妻はにっこり笑った。

 たまには家事を手伝うのも悪くない。


「何を作ってくれたの?」


 爽やかに微笑みながらブーツを脱ぐ妻。

 うしろめたい。

 いや、そんなことを思ってはいけない。

 これは勝負なんだ。


「ナポリタン」

「ふふふ、あなたは料理ができるんじゃなくてパスタが作れるだけなのね」

「……一応シチューとお雑煮も作れるけどな」


 にこやかに終わった夕食。

 さあ、ここだ。

 ここで言うんだ、俺。

 なんかプロポーズよりも緊張している。

 口を開こうとしたら先に声をかけてきたのは妻の方だった。


「洗い物は私するからいいよ」

「あ、ありがと」

「でも、あなたがごはん作ってくれるときって、だいたいなんか隠し事してる時なんだよねー」


 何も言い出せなくなってしまった。

 

 たまには家事を手伝うのも悪くない。

 下心がなければ、の話だ。


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