第7話 決着
「死ねェ!」
ハウンドが拳を振るうのだが、マリアは手を開らいて受け止める。
相手は変容しているのに対しマリアは姿すら変えずにこれなのだから、変容したらとエリーは勝てるのではないかと思うのだが。
「ふん」
返す拳でハウンドに拳に叩き込むと、ハウンドはよろめくのだが。
「はッ、調子に乗るなよ、クソが!」
ハウンドはポケットに手を乱暴に突っ込むと銃を取り出した。普通のリボルバーではない、かなり巨大な銃だ。
「特注のマグナムだ、普通の奴は死ぬ奴だ。賞金首でも耐えられるかなァッ!?」
猛獣撃ちにでも使うような銃だ。弾薬はエリーがリボルバーに装填しているものなど比較にならない火薬を詰め込んでいるはずだ。
乱暴に引き金を引き、撃った。狙いなどどうでもいい、人間でも当たれば即死するような弾丸だ、いくら悪魔とて動きを止めるだろうと。
轟音が響く。
「!」
弾丸が腹部に命中する。エプロンドレスは焼けるが、火傷は悪魔の力で負ってはいないようだがダメージは相当なものだったようだ。
「……」
痛みに耐えきれなかったのかマリアはその場に倒れ込む。
「おいおいおいおいおい! 想像以上じゃねェか! クソ忌々しいのがぶっ倒れるとか最高じゃねぇか!」
「……」
エリーは戦慄させられる。無敵だったはずのマリアが銃弾で倒れたのだ。生きているかどうかはわからない、だが、絶望がその場にいた全員を覆う。
「嘘だろ……」
「あっさりと……」
だが、マリアが倒れたのはエリーに転機をもたらす。
――いや……。
首を振った。マリアに頼りきりにしようとした自分を恥じなければならないと思ったからだ。
これでは手下に手を汚させようとしたハウンドと何が違うのかと。
「わたくしが始末します!」
手は震えていた、ハウンドが持つリボルバーと比べれば心もとないのは事実だが、恐れてはならないと奮い立たせる。
「豆鉄砲で悪魔を殺せるとでも思ってるのかよ、嬢ちゃん?」
「やりますわよ。悪魔とて元は人間ですわ!」
笑うハウンドを無視して引き金を絞る、心臓を狙うが。
「ハハハハハハ、所詮豆鉄砲か!」
命中こそすれど、血すら流れない。
「……待ちなさい、戦いながらも聞きなさい……ッ」
倒れているマリアがエリーに声をかける。
「恐らく、あれは本物は悪魔ではない……」
「!?」
戸惑う。銃弾を受け止め、マリアの拳すら受け止める存在が悪魔ではないなら何なのかと。
「肉体強化改造を施したのだと思われます……」
「改造……?」
何の話だとエリーは訝しむのだが、
「保安官から聞いたでしょう、奴は元は特殊部隊の所属だと」
「そこのクソ女の代わりに説明してやるよ。冥途の土産って奴にな」
ハウンドがゲラゲラと笑う。
「軍はな、特殊部隊にいた連中に肉体改造を施してたのさ。国中の悪魔どもを潰すためにな」
「悪魔がそんなに……」
エリーは戦慄させられるのだが、ハウンドは知った事かと笑い。
「まァ、特殊部隊は潰れたが、俺ら改造手術を受けた連中を処分できなかったのさ」
「喋ってる余裕があるのですの、ハウンド?」
胸ではなく、別の位置を狙うがハウンドには余裕を保っている。
「一発当てようとか考えずにさっさと故郷に逃げ帰ればよかったのになァ。くびり殺してやるよ」
ハウンドがエリーを掴もうと手を伸ばすのだが、
「隙あり……です!」
倒れていたマリアが立ち上がり、ハウンドの腕を掴んだのだ。
「死にぞこないが……!」
「死んだわけではないですからね……。ッ……」
吐血だ。ダメージを受けているのに力を発揮したのだから、ダメージがかさんでいるのだろう。
「……拘束が条件でしたか」
動きを止めたハウンドの胸からグロテスクな物体が露出した。恐らく心臓だろう。
「今です、撃ちなさい……! この心臓を撃てば死ぬはず……」
ハウンドを掴んでいるマリアが声を絞り叫ぶ。時間はない、今逃せば機会を失う事になるだろう。
「くッ……」
最後の一発だ。エリーは慎重にかつ、素早くハウンドのコアに狙いを付けた。
そして、引き金を絞り――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます