第6話 決断と悪魔

――どっちが勝つか、だな……。

 笑みを見せてはいるが、ハウンドにも不安がないわけではない。

 だが、ガトリング砲だけで圧勝できる相手ではないことはハウンドも承知している。

 マリアの身体能力は人間のそれを超越しているからだ、ただ、エリーは普通の人間だから、簡単に対処できると踏んでいたが。

「……」

 対峙する三人。

 どちらが先んじるか、分からず沈黙が流れるのだが、

「へッ!」

 ――小娘どもが!

 引き金に手を掛けたのはハウンドだ。

 だが――、エリーにはスローモーションに見える。神経を集中させているゆえだ。

 ――油断しきってますわ!

 悪魔とて蜂巣にできる、ハウンドはそう青写真を描いていた、それが油断に繋がった。


 エリーは愛銃のピースメーカーの引き金を絞る。

 ――素人ではではありませんのよ!

 これでもエリーは没落しているとはいえ元は貴族、銃での狩りは嗜んでいる。

 その銃口はハウンドの手元を向いている。


「ぐあッッ!」

 放たれた銃弾はハウンドの手を貫き、風穴を開ける。

「はッ」

 その隙にマリアが距離を詰め、ハウンドのガトリング砲を蹴飛ばしてへし折った。

「この、クソアマがッ!」

 ハウンドが風穴の空いた手を押さえる。

「あら、形勢逆転ですわね、狂犬さん」

 エリーはフッと笑って見せた。部下は罠で全滅、頼みのガトリングも潰されたとあっては何もできないと。


「おい、クソアマ。それはちょっと俺を舐めすぎてねェか?」


 ハウンドはゲラゲラと下品な笑い声を発する。

「……!」

 その前にマリアは蹴りを放つのだが、ハウンドの腕は折れるどころか、逆にマリアの蹴りを弾いてしまう。

「あの弱腰保安官あたりから聞いてるだろ? 俺が元特殊部隊だった事をよォ」

 砂煙を上げる中、まだ笑い声をあげている。

「ガトリングでアッサリ片づけてやろうと思ったが、ここまで舐めた真似をされちゃ俺の沽券に関わる、直々に皆殺しにしてやる」

 マリアの蹴りを弾いたハウンドの腕はドス黒く変色し、丸太のように太くなっていた。


「あのクソッタレな軍が授けたこの悪魔の力でなァッ!」


 砂煙が晴れると、ハウンドは頭から二本の角を生やし、体中の肌はドス黒く偏食させた。

「ひッ……」

「なッ、なによ。あれ……」

 まさに伝承を出てくる悪魔を想起させる姿に、遠巻きに見ていた住民は怯えきってしまった。

「!」

 エリーでさえも思わず固唾をのんでしまうのだが、


「怯んではいけません、こちらにも悪魔がいるのを忘れたのですか?」


 そういうマリアは、フッと余裕の笑みを住民やエリーに見せていた。 

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