第2話 草原で寝る

 野宿のコツはとにもかくにも平らな地面を見つけることだ。

 いくら寝付きがいいからと言っても、眠れないわけではまったくないとは言っても、ボコボコした地面で眠ると翌朝かなり体が痛くなる。もちろん草原や砂場みたいな場所があればそれに越したことは無いのだが、野宿せざるを得ないケースはだいたい山の中とか森の中とかで、平らな場所を探すだけでもかなり苦労する。据わったままで眠るにしてもやっぱり体は痛くなるし、できればちゃんと横になって眠りたい。

 既に日が沈む時間で、かつ森の中なのでかなり暗い。かなり暗いが、バイクのヘッドライトがあるのでよゆう。いやあいいねバイク。買って正解。めっちゃ楽。

 悪路をしばらく走ると、少し開けた場所に出た。開けた場所とはつまり、魔物とかがひたすら木の芽やら草やらを食べるので擬似的に不毛の地と化した一角のことである。明らかに魔物の食事場所なのはともかく、木の芽やら草やらを食べる魔物はかなり体が小さいものが多いので、それ自体は問題ではない。問題はそれを食いに来る大型の魔物の方だ。小型の魔物の食事場所はつまり大型の魔物の食事場所でもある。さて。


 まあいっか眠いし。


 眠気が限界に達したので思考を放棄し、寝床を設営する。携帯食を少量かじって夕食とし、歯磨き草(苦くてまずいが口の中がすっきりする)を噛んで、水分を取る。一日中バイクで走って疲れたので軽くストレッチをし、寝袋にくるまる。

 目を閉じる。

 目を開く。

 周囲は結構な大惨事になっている。

「ひい、ふう、……うわあ」

 死骸を通り越して残骸としか言えないようなあれそれについちょっと引いてしまった。たぶんこっちの小さい頭蓋は草食獣、こっちのでかい嘴はそれを食べに来た肉食獣のものだろう。いくら我が身が無事とは言え、この光景はちょっとやだ。臭いし。うわしかも寝袋に血ぃついちゃってんじゃん気に入ってるのにこれ。最悪。

 とはいえこの血の海に留まってもなにかいいことがあるわけではないので、凹むのもそこそこにして荷物をまとめてバイクに跨る。少し行ったところに川があるはずだから、そこで水を汲みつつ朝食にしよう。


 しかしいい天気だ。絶好のバイク日和だな、うん。

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