糸、紐、ロープ

豊富な水源がもたらしたのはレンガだけではなかった。


たっぷりの水に漬け置きすることができるようになったので始めたのが繊維づくりだ。


生産班ジャック率いる部隊は薪作りのかたわら、生木の皮を剥いで持ち帰ってもらっている。


家事を行う非戦闘員達がこの木の皮の外側と内側に分けてくれる。その内側の皮を叩いてほぐしたあと、たっぷりの水に漬けて1週間ほど放置し発酵させるのだ。


ちなみに容器は陶芸窯で焚いた大きめの器だ。まだ素焼きなので少しずつ水が滲み出てしまい少し不便だが。とりあえず我慢してもらう。

竹灰やカタツムリの殻を焚いて作った石灰などを混ぜた釉薬の調整がうまくいっていないのでそれが成功したら本格的な陶器を作る予定だ。


さて、この漬け置きして腐らせた木の皮を水揚げし洗うと腐った部分が取れて繊維が残る。それを今度は木灰から作った灰汁でゆでる。


さらに水で洗った後、天日干しをして繊維の出来上がりだ。


この繊維を今度はネジってり糸を作る。ほどけにくい撚り方は教えるが手作業なので長い道のりだ。


さらに一部の糸をまとめて紐にし、紐をまとめてロープにする、必要に応じてどんどん太く強くできるが、それだけ時間がかかる。


その繊維で服を編むのは手間がかかりすぎるので止めておく。

どちらかというと糸を作り、毛皮を縫って服を作るほうが速いだろう。

針は手先の器用なヤジリに頼みボアの骨から削り出してもらう。


寒くなるまでまだまだ時間があるのでこの作業は余裕のあるときだけ行ってもらう。

やることが多すぎて人手が足りないが、少しずつ前進しているのがわかる分みんなもやる気は高いまま保たれている。

生産の仕事は結果が見えるのでやりやすい。


難しいのは何もない状態を維持する保安面の仕事だが、こちらはケン隊長がしっかりしているので任せておくことにする。


また、繊維づくりに関しては索敵班が捕まえてきてくれた蚕を使った養蚕も始まった。

蚕は繁殖が速いので数を増やすのにも適している。

桑の葉を大量に集めてもらうのと、竹の残りで四角く平たいザルも作り環境を整える。

はじめから大規模に行う必要はない。


繭ができると水に入れ火にかけゆでる。何十個もの繭をまとめて一本ずつ糸を取り出しまとめて糸にする。

実は最後に残った蛹が本命だ。


ゴブリンたちはこの蛹を食べて気に入ったらしく糸よりも蛹のために養蚕を行っていると言っても過言ではないだろう。


絹糸はまだまだ少ないし、織物を行う余力もないので、弓の弦くらいにしか利用価値がないことも評価が低い理由だ。まあ、あって困るものでもないので使わない絹糸は温度の低い地下深くの保管庫にためておく。

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