九日目 水源
「ラパス様ー、とうとう出ましたー!」
みんなと新しく掘る狩りのための落とし穴の位置についていつものように入り口の部屋で話し合いをしていると、年配のゴブリンが入ってきた。
一瞬みんなの間で緊張が走る。
しかし、年配ゴブリンは外から来たのではなく、シェルターの奥からやってきたので、魔獣が出たのではないとすぐに気付き落ち着きを取り戻す。
「何が出たのでしょうか?」
「み、水です。たくさんの水が出てきました。早く来てください。溢れてます」
「おおー、とうとう出ましたか。それでは早速行きましょう」
みんなで行く必要はないが、すでにみんな腰を上げているのでもう話し合いにはならない。
下へ降りるルートはロープが張られたり、瓦礫が取り除かれたりと、安全のために多少整備されて来たので、歩きやすくなっている。
下へ降りると最近ずっと鳴り響いていた壁を掘る音に変わり、ピチャピチャという、水の滴るような音がしている。
元ポンプ室の外には採掘作業に従事していた残りの二人が佇んでいる。
「ラパス様、お待ちしておりました。水が溢れそうなのですがどうすればいいでしょう?」
中を除くと床は一面水浸しだった。
そして、掘られた壁の穴から水が流れ出している。
ポンプ室は入り口から1メートルほど低く作られているのでまだ溢れ出て来てはいないがこのまま貯まるとそのうち溢れ出すだろう。
床面に1センチくらい溜まった水がどのくらいの勢いで増えるか測定してみる。
最初の5分間で2.5ミリ水位があがる。
次の5分間では2.3ミリ。
その次は2ミリ、といった具合でだんだんと溜まる量が少なくなっていることがわかった。
「大丈夫そうですね」
そう言うと、みんながホッと息をつく。ずっと黙って水を眺めていたのでみんな心配していたようだ。
「排水口は機能していますし、壁や床面からも水は滲み出ているので、水位が上がり水圧が高まれば排水速度も速まりますからあふれることはないと思います」
「「「???」」」
説明が難しすぎたようでみんなの頭の上にクエスチョンマークがともっている。
「すいません。湧き出ている水はくるぶしの上ぐらいの高さまで来たらそれ以上増えないということです」
これで、安全に水を確保できるようになったし、貴重な戦力を水汲みに使う必要がなくなった。今後、水汲みは非戦闘員や子供たちの仕事にしよう。
部屋の中にはガラス製5ガロンボトルを用意しておいてもらっているので湧き出た水を貯めてもらうことにする。
そして、元ポンプ室の床にはピットが設けられており、その部分だけは結構深い。
ここを活用して今後、水浴びをできれば良いかと思う。
ただ、地下深いためそこそこ寒いのがネックだ。
清潔になっても風邪を引いてしまえば本末転倒なので、身体をすぐに乾かせるようタオルなどが先に必要だろう。
とりあえず、安全な水源を確保できたことで、当初立てた緊急に対応が必要な4項目は達成できたと考えていいだろう。
・火
・水
・食糧
・安全
これからは中長期計画に移ることにしよう。
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