七日目 周辺状況確認

食料調達を後回しにしていたのは確かだが、何もしていないわけではない。

索敵班による周囲の確認は行ってもらっているし、その中には周囲の植生の調査も含まれる。


そして、調査の結果、食べられそうな山菜が多く見つかった。

植物の生態系はそれほど変化がないようで、彼らが参照用に持ってくるものは大体過去のN国に生えていた春の山菜と同じだ。


念のため有害なものがないかチェックしてみたが、その辺は長老も詳しいようで口を挟む必要はなさそうだ。

長老の話を聞くと過去の世界にはなさそうな植物の話も出て来たが、実物を見ない限り正確なことは分からないだろう。


索敵班のもたらす情報はすべてラパスに報告され、周辺マップとして記録される。みんなが活用できるようにこのマップはシェルター内の壁面に炭を使って描いてある。

あとは、少しずつこの地図の読み方をみんなに教えていくだけだ。

そのうち自分たちでアップデートしてくれると助かる。


その周辺マップによると、シェルターの東側と北側はグレートボアの縄張り。

このシェルターはその縄張りの南西の角近くに位置していることになる。

ここより南へ行くとダイアーウルフの縄張りとなる。


西側は踏み込んでいないらしいが、ギガントベアの縄張りだという。

木の幹に付けられた爪の痕と身体をこすりつけた幹の匂いによるマーキングを見つけたので確実だそうだ。

一歩でも踏み込めば鼻の良いギガントベアに目を付けられるため、不用意に踏み込むことは出来ないという。


さてここまでが魔獣の分布についての報告だ。魔獣以外に魔物がいる。


ちなみに彼らゴブリンの認識としてはというのはゴブリンのことで、魔物は二足歩行で道具を使う生き物、魔獣はそうではないがを食べる生き物とのことだそうだ。

当然、鎧人は魔物に属する。

他にも昆虫や普通の動物が存在するがそれらはを食べないので魔獣ではない。

つまり、熊は危険だが動物になるが、の味を覚えた熊は動物ではなく魔獣になるようだ。


鎧人の集落は東にある小川を越えてさらに2日以上歩いたところにあるらしい。強い魔獣の出るシェルター周辺ではあまり遭遇しないという。

鎧人以外の魔物に関してはこの辺りにもいるはずなのだが、魔獣と違い縄張りをしめす明確なマーキングがないため正確には分からないようだ。


漠然とわかっている範囲でいうと昔から山のすそ野にあたる低い場所はゴブリンとオーク、そして少し離れた北の湿地帯をリザードマン、東の森が切れた辺りから鎧人が住んでいるという。


ただ魔物同士でお互いに連絡を取り合うわけでもなく、言葉が通じるわけでもないのでその辺で見かけたことがあるという程度の情報らしい。


当然、quiquii族以外にもゴブリンの集落はあるが、森は広いので特別な機会を除いて交流はないという。

また、敵に追われている時に他の集落に逃げ込むのは嫌がられる行為らしく、普通は威嚇され追い返されるし、最悪の場合は殺されることもあるそうだ。

逃げて来た人をかくまったせいで自分たちも見つかってしまえば、集落全体が危険にさらされるので仕方ないだろう。



ここまでの報告を聞いたところで良い方法を思いついたので検討してもらう。



ギガントベアのマーキングである爪痕に似せたマーキングをこのシェルター周辺の木にもつけるというものだ。

戦士たちは爪痕だけで匂いがしなければすぐにバレると言っていたが、鎧人が過去の人間と同じ種族なら効果はあるだろう。

人間は嗅覚情報より視覚的情報を重視するはずだ。


そのように説得すると納得してくれた。

そして、グレートボアの糞尿を使い匂いのマーキングもしたらどうか、という意見が出た。

確かに、シェルター周辺を縄張りにしていたグレートボアをこの間討ち取ってしまったので、そのうち匂いが薄れてしまう。

今の間に他のボアの匂いを付けておくと牽制くらいにはなるかもしれない。

そう考え実行してもらうことになった。

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