三日目 安全対策2

「えっとですね、毒を飛ばせるようになってもらうと言うのは例えですよ。普通に遠距離攻撃が出来るようになってもらいたいだけです」

「はい!」

みんなが「なるほど」と納得している所、元気よく返事をしたのは、女性の戦士だった。

「確かあなたは投石器を使われていましたね」

「はい!」

彼女は笑顔で返事をするが、「はい」以外には何も言ってこない。

「投石器も重要ですが、一人だけでなくみんなが遠距離から戦えるようにしたいと思います」


ゴブリンは背が低く、リーチも短く、力も人間もとい鎧人より弱い。それなのに彼らの戦闘方法は近接武器によるものばかりだ。

これを遠距離中心に変える。


「でも弓は壊れていますし、他に武器はありませんよ」

このまっとうな意見を発したのは女性戦士ではなく、大人になる少し手前くらいの男子だ。


「そうですね、でも壊れているとはいえ弓の状態は悪くないので、簡単な修理で使えるようになると思います。矢はないのでそちらは一から作る必要がありますが、そちらもお教えしますのでみんなで作ってみましょう」

ラパスには弓修理や弓製作の知識はあるが、スキルはない。だから本物の職人が作るような弓は出来ないがある程度使えるものは作れるはずだ。


「ぼ、僕にも弓を教えて頂けますか?」

先ほどの若者は弓に興味があるようだ。

「えっと、それは隊長の許可があればもちろん構いませんよ。いかがでしょう、隊長?」

「まあ、いいーんじゃないか。そんかわり途中で投げ出すんじゃないぞ」

「もちろんです。ありがとうございます、隊長。それにラパス様」

「まずは修理してからですけどね」


遠距離武器は近接武器より複雑なのでメンテナンスが出来るようになってもらわないと結局また壊れて放置されることになる。


「それと、説明の途中でしたが、遠距離武器を使えるようになる事で戦力増強以外にも様々な利点があります。

まず、狩りが楽になるので食糧を確保しやすくなるでしょう。

そして、長老が作られる『毒』と弓矢は相性がいいので、上手く使えば今より安全に攻撃できるようになります」


彼らは今まで毒を剣や槍に塗って使っていたようだが、本来は弓矢に使うべきものだ。

体の大きな獲物に対しては、即効性のある毒でも効果が出るまで数十分から数時間はかかる。

近接武器ならその間ずっと命を危険にさらして逃げ回らないといけない。


「どうでしょう、安全な場所に隠れて攻撃を行いすぐに逃げるという戦い方はできないでしょうか?」

これができるなら非戦闘員の一部はある程度防衛戦力として役に立てるだろう。


「それは、ありがたい」

「それなら安全に狩りができる」

「だが、弓を使えるようにならないとダメだからな~」


おおむねみんなの意見はポジティブなようだ。意外にも戦士たちの方が積極的だ。

どうやら今まで敵の近くに戦う必要があり怖かったのだという。遠くから安全に攻撃する方が彼らの性格に合っているようだ。


もっとも安全に戦う方法は弓矢だけではない。順次他の対策も実施していく予定だ。


「ともかく、まずは材料集めからです」


索敵班の話を聞く限り竹らしきものを小川の側で見たことがあるらしい。

それ以外にも弓矢に適した木もあるはずだが、細かい木の種類を特定するのは難しそうだし、竹は他にも役立つから竹を集めてもらうことにする。

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