三日目 安全対策
みんなが起きてくると、考えておいた安全強化対策を説明する。サトシはまだ寝ているが、徹夜だったので寝かせておいてあげよう。
まず、今までquiquii族が行って来た安全対策が間違っていたわけではないことを話す。ただ偏り過ぎていただけだと。
「まず、安全策には三段階あります。第一段階は見つからないようにすること。第二段階は見つかった時に守れるようにすること、そして、第三段階は守れなかった時に無事逃げられるようにすることです。
今までquiquii族は第一段階に重きを置いて来ました。見張りを立て、索敵班を出し、強い敵に見つかる前に洞窟やシェルターに隠れ、入口を塞ぎ閉じこもるというものです」
みんなまじめに話を聞き、うなずいている。
「しかし、その方法は上手く行かず、みなさんは追い出されここまで逃げて来る必要があった。何がよくなかったのだと思いますか?」
うなだれている者もいるが、ほとんどの人は考えてくれている。
「...巣が見つかったのが悪かった」
「逃げるための出口がふさがれていたのも驚いた」
「煙でパニックになったものよくなかった」
一人がつぶやくとそれぞれの思いを話し出した。ついこないだの出来事なので鮮明に覚えているようだ。
「そうですね、みなさんの言っていることはどれも正しいです。しかし、どれも第一段階や第三段階の話ですよね?」
そう言うと、何が第一で何が第三だったのかを思い出せない様子のものもいたので繰り返してあげる。
「それらは、見つからないこと、そして安全に逃げることに関する問題です。守ることに関する問題点はなかったのでしょうか?」
そう言うと、みんな言い難そうに黙ってしまった。
「ラパス様、その、言いにくいのですが、今回襲って来たのは大人の鎧人でした。わたし達には勝ち目のない相手です」
一人の若い女性戦士がそう言うと、みんながうなずく。
「本当にそうでしょうか?もし、みなさんが全く相手にならないのだとすると、なぜ鎧人はみなさんが寝ている間に、煙で燻すような真似をしたのでしょう?普通に昼間に来た方が夜眼が効くみなさんを取り逃がす心配もないじゃないですか」
そんなことは今まで考えたこともなかったのだろう、隊長を含め全戦士が眉をひそめ真剣に考えている。
「鎧人はみなさんが抵抗するのを嫌がったのだと思いませんか?」
・・・
反応がない。
みんなそんなことを考えたこともないと言った表情だ。
「ラパス様、鎧人はわたし達より強いです。なぜ、わたし達と戦うのを嫌がるのですか?」
大人ではなく子供が質問して来る。
「quiquii族ではネズミを捕らえて食べていますよね」
「はい、あまりおいしくはないですけど」
「と言うことはネズミは弱くて、quiquii族は強いということだね」
「もちろん。ネズミより強いですよ」
「それじゃあ、なぜ罠にかかったネズミを捕まえる時、後ろから捕まえるのかな?ネズミの方が弱いなら前からつかんでもいいんじゃない?」
「前からつかむと咬まれるからです。それで、咬まれたら病気になるからです」
「そうだね。鎧人も同じように感じているんだと思うよ。quiquii族が起きている時に攻撃すると毒を塗った武器で反撃されて痛い思いをするかもしれないから、わざわざみんなが寝ている時に来て、直接戦わないでもいいように煙を焚いたんじゃないかな」
質問をしてきた子供だけでなく大人たちも今の話を反芻し、少しずつ理解してくれているようだ。
「そこでだよ、ネズミの例に戻るけど、近づく人に毒を飛ばしてくるネズミがたとしたらどうだい?捕まえようと思うかい?」
「うーん、危ないから近づいちゃダメって言われると思う」
「そうだろうね。それじゃ、大人の方はどうですか?毒を飛ばすネズミを捕らえますか?」
大人の方が子供ほど想像力が豊かではないのか、毒を飛ばすネズミを想像するのに時間がかかるようだ。
「そうですね、毒を飛ばさないネズミもいるなら、そっちを捕らえるでしょうね。わざわざ危ない獲物を捕らえる必要はないですし」
戦士の一人が答えてくれる。
「その通りです。そして、これはネズミだけでなくquiquii族に関しても同じです。鎧人もquiquii族が危ない獲物だと思ったら、手を出すのを
!!!
また、みんな驚いた顔をして固まってしまった。
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