第二章 中期対策
中期対策
平和な社会を実現する。
その目標のためにはまずその社会の構成員であるquiquii族が死に絶えないようにしなくてはならない。
緊急対策で当面の安全は確保できたので、中期対策ではより安定した生活を目指す。
今の状態でも差し迫った命の危険はないが、この状態のまま長くは続けられないからだ。
たまたま捕れたグレートボアの肉はそのうち尽きるだろう。
どこかで拾ってきた道具もいつかは壊れるだろう。
木の実なども冬になれば見つからなくなる。
シェルターもいつかは発見される。
すぐに子供も産まれてくる。
いつまでもこの状態を維持するだけでは行き詰まることは確定している。
そこで下記の四点を中期目標として掲げた。
1.狩猟採取偏重からの脱却
2.道具(特に鉄器)不足の解消
3.安全圏の拡張
4.全体的な死亡率の低減
1つ目の「狩猟採取偏重からの脱却」は、安定した食料調達をするためにも欠かせない。
それに、冬が来ると狩猟採取で確保できる量が激減するのでそれまでに、保存食と共に整えていく必要があると考えたのだ。
別に畑を始める必要はない。
もっと簡単にできることがある。
quiquii族は虫も食べるので、虫の養殖をするつもりなのだ。それなら室内で安全に行える。
水が出たのできのこ栽培もいいかもしれない。
適当な虫や植物が見つかったら始める予定だ。
2つ目の「道具(特に鉄器)不足の解消」はそのままだ。今後、地上の生活圏を広げるなら、木を切らないといけないが、鉄の斧が1本では足りない。何をするにも鉄は必要だ。
まだ、鉄鉱石などから鉄を作るのは無理だろう。
しかし、そんな難しいことをしなくても大丈夫だ。
ここには鉄で作られた設備がたくさんあった。今はたくさんのサビ山がある。
それを還元すれば鉄が手に入るはずだ。
3つ目の「安全圏の拡張」は具体的には今の「シェルター周辺」から川辺まで非戦闘員でも行けるようにすることだ。もちろん、戦闘員の護衛付きでだが。
まず、すでに偽マーキングで鎧人は遠ざけてある。
魔獣たちはこのシェルター周辺を縄張りにしていたグレートボアがいなくなったことに気がつくと必ずやってくる。
そのため、罠の設置、遭遇したときに逃げられるよう避難所(木の上など)の設置、不意打ちを受けないよう下草を刈るなど道の整備が必要となる。
それが済めば木々の伐採も視野に入れるべきだろう。
4つ目の「全体的な死亡率の低減」に関しては鎧人は魔獣の襲撃によるものではなく、病気や怪我による死亡率の方に重点をおいている。
長老から話を聞くと、出産時や人口が増えたあとの死亡率がとても多い。すでに妊婦もいるので今のうちに対策を進めないと間に合わない。
病気の方は手洗いうがいをすれば半減するだろう。
トイレも隔離しているから衛生水準は格段に良くなっているはずだ。
長老の持つ薬草の知識は経験に基づく有用なものだが、十分にカバーできていない部分も多い。
せめて消毒用のアルコール、できればペニシリンぐらいまで欲しいが、中期対策での達成は難しいだろう。
何か他の方法を模索する必要がありそうだ。
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