第47話 いつか必ず……。
小学生時代の頃の土曜日は、私はとても自由に過ごしていました。
田舎にある我が家の周りの林をアラレちゃんポーズで、キーン!と言いながら駆けずり回ったり、カメラを持ってウロウロして写真を撮ったり、アラレちゃんのキックボードでひたすら走ったり、もしくは気に入った木を見つけては木登りをしていました。そんなある日、ふと思ったのです。丘の上にある、この木にブランコを作ろうと。
すぐに祖父の物置を物色。
ブランコを作るのに、使えそうなものがありました。黄色と黒でできた縄。そして木製の洗濯板。楽観的すぎるところがある私は、これでブランコができると思いました。早速ロープ1本と洗濯板片手に、丘の上の木へ。木に登りロープをくくりつけ、それから洗濯板の真ん中にぐるぐるとロープを回して取り付けました。
即席簡易的なブランコの完成です。
それに座って――ロープを挟んで座る格好になりますが――、ゆらゆらと揺れながら丘から見渡す景色が好きでした。しかし正確に言うと、そこは丘というか、崖。だから眺めがよかったのです。宙に浮いている感じがしました。爽快。
翌週。
楽観的すぎる私は、「そうだ! もう一本ロープをつけよう!」と、もう一度木に登り、もう一本ロープを垂れ下げ、2本のロープで洗濯板の両脇を固定することに成功。
できました。結構本格的なブランコ。
それで、思いっきり前後にスイング。アルプスのハイジ的なスイングを目指しました。後ろへブランコをスイングすると私は林の中へ。そこから一気に前方へ進むと空へ。つまり、ブランコを前後に激しくこぐと、林から崖。素敵な言い方をすれば、丘から空を繰り返していました。
リアルハイジを堪能です。
私は大興奮で「ブランコができた!」と母に告げました。家族は、裏山の丘の上、兼、崖淵へブランコを見に来ました。大絶賛です。
楽観的すぎる家族です。
もし落ちたら、もしロープが外れたら、もし洗濯板がパキット割れたらなんて、誰も考えませんでした。そして、あろうことか、私は学校でも自慢げにそれを話をしました。友人がわざわざ遊びにきて、ブランコに乗りに来ました。
事故がなくて良かったです。
しかし、あのブランコの爽快感は忘れられません。
*
また、ある時は、私は木の上にトムソーヤのツリーハウスみたいのを作りたくて、釘とトンカチ、板を抱え、ウロウロと裏山を歩いていました。
これかな? と思える木を見つけて、よじ登り、トントンと板を一枚打ち付けたところで、酷く疲れ、辞めました。
私のこの何かしら作りたいという想いは、祖母からくるDNAの仕業です。
私が小さかった頃のある日。祖母が日中ずっと、山の裏でトントンカンカンと何やら作っておりました。そのうちに小さな家が建ったを見た時は、たまげました。それは、私と姉のおままごと用の家。ちゃんとガラスの窓もあり、2畳もありました。
おばあちゃんが一人で家を作った!
それは、幼い私にとって、衝撃的な出来事でした。私は、小屋をさすがに作ろうとは思いませんが、本屋でログハウスの作り方の本などを見ると、どうも気になり立ち読みします。また、ログハウスの展示場にはよく行きました。なんとなく興味があるのですね。DNAには逆らえません。組立式の家具を買うと、夫には触らせず、一人で黙々と組み立てています。無心。
去年、テレビで、ゲルの特集を見たんです。ゲルとは、あのモンゴルのまんまるい白い家です。テレビの中のゲル大好き同好会のみなさんは、結構普通に組み立てていました。それからずっとゲルが欲しいと思っています。ログハウスにも憧れていますが、建てるのはさすがに無理。でも、ゲルは、なんとなく現実的な気がしています。
夫は冗談だと思っているようですが、私は本気です。組み立てられる自信があります。庭のあそこに、いつか絶対建ててやります。ゲルを……。
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