第42話 大好きです

 留学先で学んだことが多い。


 例えば、笑顔。


 笑顔で、あなたの事が好きです、と伝える事ができるということ。


 例えば、ハグやスキンシップ。


 ハグやスキンシップで、私は何もできないけれど、あなたの味方ですと伝えることができるということ。


 例えば、ふざけること。


 大人になっても、ジョークを言って沢山笑う事が、子供じみたことをするのが大切だということ。


 例えば、悲しみを表現すること。


 悲しいときは、悲しいの。そういう表情をする。すると、誰かが大丈夫? と話しかけてくれる。ちょっと気晴らしに行こうよとか、そう助けてくれるようにアピールすることが大事。


 助けたほうも、助けられたほうも、喜びが最後に残る関係性がある。


「愛している」「素晴らしい」「美しい」「素敵ね」「可愛いね」。そういう言葉を、思っているなら、頻繁に軽々しく言ってもいいということ。


 それは、想像以上に人を幸せにするから。


 沢山学んだと思う。どう、生きるかを。


 何よりも、人間というのが感情の生き物だから、その感情に素直であり、その感情に寄り添いながら生きる事が大切だとか。その感情を助けてもらいながら、補い合いながら、許しながら、友情や家族愛を作ることを学んだ。


 日本人は、まだ「我慢しすぎる」ところがあるんだと思う。感情や、心をさらけ出すのが苦手というか。 特に若い子で、繊細で沢山人や状況から感じ取る子ほどそうだと思う。

 

 時々、子供や大人からも相談を受ける。と言っても、アドバイスするというよりは、ひたすら聴いているだけなんだけれど……。


 彼らは、「誰にも言えなかった」「理解してもらえなかった」と言う。どんな否定的な思いだって、「それは、人間だものあるさ」という私のスタンスが、もしかしたら、人が心を開いてくれる理由かもしれない。


 相談を受けたあと、女性なら必ずハグ、男性なら笑顔を心を込めてすることにしている。「あなたが大好きです」と心の中で念じながら。


 「大好きです」は、その人の、問題解決能力を引き出す力があると思うの。彼らは、強いんだ。本当はね。心に寄り添ってくれる人さえいれば。


 相談を受けた帰り道は、風や月や星が、「彼らはきっと、大丈夫」と言ってる気がする。だから、私も同じように、彼らを応援しようと思う。


 「きっと、大丈夫」

 

 私は、人間らしく、自由に感情と寄り添って、存在していたい。そして同時に、私は関わる人の感情に寄り添うことも、させて欲しい、と、思っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る