第35話 ティーカップの意味

 三半規管が弱い。


 小さな頃からそう。

 いつでも、どこでも、すぐに酔う。


 だから、車は、常に運転したい。助手席にいると酔ってしまう。誰の運転でも。


 基本的に運転するのは好きだから、いいのだけれど、雨の日の運転は嫌いだ。


 だってワイパーが動く。


 夫は、「ワイパーを見たらダメだよ!」と言う。そんなことわかっているけれど、見ているのかもしれない。酔う。


 バスに乗ると、気持ち悪すぎて、必ず、降りるとしばらくぼーっとどこかに座っていなければいけない。


 バス、タクシーは、匂いでも酔う。


 文字酔いもする。パソコンやスマホで見るのは限度があり、よほど調子がいいか、のめり込んでいないと読み進められない。


 テーマパークの乗り物だってそうだ。閉所恐怖症的なところもあるから、アトラクションに乗るときは、目を瞑り「神様」と祈った。その姿を見て、夫は、もう私とは乗らないと言った。


 そりゃそうだ。

 本当にそれ以来乗っていない。


 観覧車だって怖い。あんな狭いところに入れられて、高いところへ連れられて、そして回される。わかるでしょ? 


 私にとっては、ちんぷんかんぷん。

 

 回転寿司に行ったって、調子の悪い日は目が回る。


 だから、テーマパークにあるテイーカップの意味が、わからない。


 そうでしょ? 


 ティーカップの意味……。ちんぷんかんぷんである。

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