第23話 ゴロンゴロン

 とある100文字小説を読んでいて、「ンゴロンゴロ保全地域」というのがタンザニアにあると知った。そのタイミングで、長編を書き終えて、少し推敲を始めていた。そしてその頃から、びっくりするくらいンゴロンゴロンしたいんだ。


つまり、日中眠いんだ。


 朝、起きて、もう眠い。

 家事をして、ゴロン。

 猫の世話をして、ゴロン。

 仕事に行く準備をしてゴロン。

 おかしい。何故こんなに眠いんだろう?と思いながら、ゴロン。


 小さな頃から、寝るのは得意だった。布団に入ればすぐに眠れる。けれど、大人になってからは仕事終え、帰宅し、夕食を食べている時に、オカズを箸で持ったまま眠るとかは頻繁に起きた。疲れが急に眠気に変換される体質なのかもしれない。

でも、突然眠たくなって、夕食中に、会話中に寝るのは、一日の終わり、帰宅後の出来事だったんだ。


 現在、四六時中眠い。

 

 *


 仕事に行くために、車に乗るが、あーゴロンしたい、と、思う。仕事中はかろうじて覚醒し、仕事が終わると、またゴロンしたくなるのだ。


 水曜日。夜、9時。


 仕事を終えた途端に、睡魔に襲われた。凄まじい。ヤバイヤバイとAKARI意識に警告する中での運転。私の体はふわふわしてる。意識もふわふわしてる。危ない。


「AKARI! 寝るな! 頑張れ!」


 とエールを送るが救いがたく眠いのだ。やっとの思いで、コンビニの駐車場に車を止めて、寝た。


 数分後。


 アカン! 食べねば! 買い物せねば! と、フラフラしながらコンビニに入ったが、思考が回らない。とりあえず、もやしと豆腐、私のマストアイテムをカゴに入れた。その後「APPLE PIE」と脳に文字が浮き出た。


 そうか! アップルパイを体が欲してるのか! と、探したが、ない。


 ゴロンゴロンを許されない中、欲しいアップルパイさえない、と、呆然。パンのコーナーの前で立ち尽くしていた。すると、聞き慣れた声が。


「今日の夕食何にしようか?」


 曜日によってはこのコンビニで出くわす主人だ。瞬間、AKARI脳に「HOME」と文字が浮かんだ。「違う違う違う! ここはコンビニだ!」と思おうとするが、もう遅かった。私は、眠い、と言って、横に立つ主人にもたれかかって、寝た。


 主人はパンを少し見てから、「あー、麦茶を買わなくっちゃっ」と移動。私は取り残された。そこに立ったまま、カゴを持ったまま、下を向いて、寝た。


 数分後。


 はっとして目を開けて、「ダメだ! 立ちながらコンビニで寝たらダメだ! もう車に入ろう! 早く帰って寝よう!」と、レジに向かった。そしたらメンチカツが目に入った。


「メンチカツを食べないと死ぬ……」


 何故かはっきりとそう思う。私は、できるだけ覚醒しようと努めながら、「メンチカツを1つください」とレジのお姉さんに伝えた。その方は、いつも以上に丁寧に対応してくれた。私が主人に、眠い、と言ったのも、立ったまま寝ていたのも、観ていたからだと思う。


 レジ前にぼーっとして立っていると、主人が来た。後ろから商品をいくつか出し、「一緒にしてください」と言った。すると、お姉さんは大きなレジ袋にそれらを詰め始めた。レジ袋は1つで済む。つまり私は用無し。


「あたし帰っていいよね」と訊くと、「うん」と主人。


 よたよたと歩きながら、コンビニの自動ドアに向かうと、自分のポケーっとしてる姿と、それを心配そうに見送る主人が映っていた。……すまない。車に入ってすぐに寝た。私は、ふわふわと夢の中へ入った。真っ白な世界。


 すると、聞き慣れた声が。


「おーい。無事に帰ってこいよー!」


 主人の声に、はっとして、「そうだ! 帰らなければ!」と思った。が、また寝た。


 その後。


 車で無事に帰還。家に入り、勿論すぐにベッドに向かう私。が、主人は、「おー! 帰ってきたか! 今日は何してんだ?」と言いながらベッドまでの道のりに立ちはだかりやがった。タックルしてやった。


 タックル後、無事にベッドにダイブ。私は安心して目をつむった。すると脳内に、看板を持ったリスが現れた。


『 ンゴロンゴロ保全地域にようこそ!』


 残念ながら、この話は全て本当だ。私は、自分の脳や体質がマヌケだと思う。そして、イマイチわからない。だから、よく歌詞にある「自分を信じる」というキラキラワードの意味がわからない。


 一時間後。


 メンチカツを食べた。確かに、少し眠気が引いた。


 貧血かしら?


 昼間のゴロンゴロンは、しばらく続きそうだ。メンチカツとアップルパイを買おう。


 何の話だろう?


 多分、書くっていつの間にか、相当、脳のエネルギーを使うんだ。そういう話だと思う。

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