第7話 ペコちゃん。

 ペコちゃんのお財布を、雑貨屋で半年前に見かけた。


 赤い生地の長財布に、Milkyと白い刺繍があり、その下にあのペコちゃんがプリントされている。一目ぼれした。猛烈に、「このペコちゃんのお財布が欲しい。ぺこちゃんのお財布が欲しい」と思った。だけどその想いを、「年相応」という魔力のかかった言葉が押し込めてしまう。


 わかってる。理性では。年相応で無難なのは、好きなブランドのCoachのお財布。少し車を走らせれば、小さなアウトレットがある。Coachの店も入ってる。行けば手に入るんだ。でも……。


 私はペコちゃんのお財布が欲しい……。


 きっとこれはインナーチャイルドの欲求だ。だから、満たしてあげればいいんだ。そう思って、ミルキーの箱を買った。別にママの味を求めているわけではないけれど、少しずつ食べて空にしていった。


 一つそのアメを食べる度に思い出す。小さい頃から、ケーキよりサラダが好きなのに、ケーキ屋の前を通る度に、立ち止まった。それは、ペコちゃんを見て「可愛い」と思ったからだ。舌をぺろっと出してる具合が素敵だと。

 

 ママの味を食べ終わり、赤いパッケージの空箱を棚に飾った。見るたびに、ときめく。そして思う。あー、ペコちゃんの財布が欲しいと。


 欲求は思ったよりも強かった。


 もう1度財布を見に行った。自分の気持ちを確かめるために。1980円という安さ。だが、金運に関しては未知だ。そして、赤はどうだろう? 目立ちすぎる。もう1つ黒のペコちゃんの長財布を見つけた。これならいけるだろうか?


 そして、熟慮の末、今日、ついにその黒い生地に白い刺繍でMilkyと書かれていて、ペコちゃんがぺろっと舌を出してるあの可愛い顔がプリントされてる長財布を買った。


 私のインナーチャイルドは満足した。何か、自分にとっての特別なラッキーアイテムを手にしたような気分だ。


 しかし、私は、こんなにもペコちゃんが好きだったとは……。

 大満足である。


というわけで、書いてしまった……。



追記


このエッセイを書き終え、何かに満足し、いざ財布の中身をペコちゃんの財布に入れ替えた。なんて、使いにくいんだ! ショック。小銭入れ、開かねーっ! もう少し、ワイドにいくと助かるんだけれど。ぺ、ペコちゃん……。んー。可愛いから許す!

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