LOVE LETTER


―――


 ~to chihiro from takuya~



「遥君はわかってくれたけど、問題は拓也さんだよな~」


 あの日から三日が経った。私も拓也さんも学校があったし、何よりスマホの電源が切られている為今まで話が出来ずにいる。本当は今すぐにでも会いたいのに、会えないもどかしさでストレスが溜まりまくっていた。


「もう一回電話してみよう。」

 今日は土曜日で休み。今日こそ電話に出てくれると思ってスマホに手をかける。が、あの時の拓也さんの怒ったような寂しそうな顔が脳裏に浮かんで、一瞬躊躇った。


「あ、手紙……」

 バイクの音がして窓から外を見ると、郵便屋さんが今まさにポストに手紙を入れているのが見えた。何となく予感がして下に下りていく。

「やっぱり拓也さんからだ。」

 手紙を確認するとそれを握りしめて部屋に戻った。


「『この前は急に帰ったりしてごめん。大人げなかったと反省してます。でも千尋とあの彼の仲良さげな雰囲気を見た瞬間、これ以上見たくないと思ってしまった。しかも幼馴染だからこそ、不安になったんだ。君達二人には僕の知らない想い出がある。そう考えると胸が痛くて……だけど冷静になって考えてみたら、千尋は今僕の側にいてくれているって気づいたんだ。9才も年上なのに情けない僕でごめん。もし許してくれるなら返事を下さい。待ってます。高崎。』……許すも何も怒ってなんかないし。」

 ぶっきらぼうに言ってテーブルに封筒を置いた時、中に何か入っているのに気づいた。

 首を傾げながらそれを取り出す。


「……え?」

 私は驚いて目を見開いた。




―――


 ~to takuya from chihiro~



「手紙読んでくれたかな……」

 高崎は自分の部屋で小さく呟く。そして傍らに置いてあったスマホの電源を入れる。

「電話しよう。」

 その時チャイムが鳴った。慌てて玄関に行く。


「はい。」

「お荷物届けに来ました。」

「荷物?何だろう……兄さんが何か送ってくれたのかな。はい、今開けます。」

 そう言ってドアを開ける。すると目の前に千尋がいた。


「千尋!どうして……」

 千尋は大きく息をしていた。駅から走ってきたようだ。

「返事をしに来た。」

「え……?」

 呆気に取られている高崎を他所に、千尋は思い切り抱きついてきた。その首元がきらりと光る。


「まったくもう!今時手紙って……それにこんなの封筒に入れちゃって無くなったりとかしたら大変でしょう。」

 そう言いながら少し離れて自分の首を指差す。そこには綺麗に輝くネックレスがあった。


「お金ないのに無理しちゃって。でも、嬉しいですよ。」

「まさか来てくれるとは思いませんでした。」

「手紙の返事、言いに来たんです。読んでもいい?」

「是非。」

 千尋が持ってきた手紙を開く。そして明るい声で読み始めた。


「『私は貴方が大好きです。これからもよろしくお願いします!』」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

 深々と頭を下げる千尋につられるように高崎も頭を下げる。


「いたっ!」

「いてっ!」

 同時に頭を上げようとしてぶつかる。お互いに痛い所を擦りながら顔を見合わせて笑った。


「結婚、して下さい。指輪はいつになるかわからないけど。」

「……はい。」

 千尋の指に手を這わせながら高崎が言うと、目に涙を滲ませた千尋が小さく頷いた。




   『LOVE LETTER』 完



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