続・初めての喧嘩
―――
「どうしよう…カバン忘れてきた。お金ない……」
私は途方に暮れていた。ついでに言うと若干道にも迷っていた……
「だって私元々方向音痴だし、暗いとよくわかんなくなるし……あ、公園だ。少し休もかな。」
歩きながら誰に向けてなのかわからない言い訳を呟いているとちょうど公園が目の前にある。私は疲れたので中に入る事にした。
「ブランコなんて懐かし~」
入ってすぐの所にあったブランコの一つに腰を下ろすと、ゆっくり漕ぎ始めた。
ギィッ…ギィッ……
夜の公園にブランコが軋む音が響く。
「かっちゃんの大バカ……」
私の呟きも暗い空の中に溶け込んだように思えた。
ガッシャッ……ン…
「え?」
急に漕いでいたブランコが奇妙な金属音をたてて止まった。
「…はぁ……誰が大バカだ。それはこっちのセリフだ、バカ!」
「かっちゃん……」
見上げるとかっちゃんが息を切らせながらブランコを掴んでいる。
「それにしてもここがお前の実家かぁ…星見えるし、月も綺麗だし、最高だな?」
「………」
「……帰るぞ。」
「待って!」
「ん?」
「どうして来たの?お父さんに泣かせたら承知しないって言われたから?」
「正直それもある…けど……」
「無理しなくていいよ。どうせ私の事信じた訳じゃないんでしょ?」
私はゆっくり立ち上がった。そしてそのまま背中を向けて歩いていく。
「おい、桜!待てよ!」
かっちゃんの声にも振り向かなかった。どんどん私とかっちゃんの距離が開いていく。
「桜!俺…お前がいないと朝も起きられないし部屋も散らかし放題で…お前がいないと俺…ダメになっちまうんだよ!」
「…え?」
思わず振り返る。真剣な顔のかっちゃんが目に飛び込んできた。
「今…思い知った。俺はお前なしでは生きていけねぇって。」
「かっちゃん……」
「お前はどうなんだ?俺と勢いで結婚したんなら、はっきりそう言ってくれ。」
「何で…そんな事聞くの?」
「いつも思ってた。桜は俺と勢いで結婚したんじゃないかって。本当に就職先が見つからなかったから俺と……」
そこまで一気にそう言うと、かっちゃんは黙ってしまった。私はそんなかっちゃんに笑いかけた。
「私も……かっちゃんなしでは生きていけないよ?そんな事始めっから知ってた。だって…好きだから……勢いだけじゃ結婚なんてできないよ。」
かっちゃんは私の言葉を聞いて顔を上げる。その顔はホッとしたような笑顔だった。
「桜……」
お互いに近寄って、かっちゃんは私を優しく抱き寄せた。
「家…戻ろうぜ。」
「うん……」
「それと、かっちゃんは卒業しないか?一応その…これから子どももできるし……」
「はい……」
どちらからともなく手を繋ぐ。仰いだ夜空には相変わらず綺麗な月と星が輝いていた……
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