第3話 鐘の音が鳴る
僕は丘の上から滑り台のようにして町へと降り立った。走った。走った。走った。
初めてこんなに全速力で走ったかもしれない…。笑ってしまうほどに、真剣だった。
「はっ…。はっ…。」
僕の息は上がり始めた。上昇気流が気持ちが悪い。だんだん近づいてくる見覚えのある町の風景は日の傾きのせいで僕を黒い世界に包み込む。
僕はまた、恐怖を覚えた。懐かしの故郷に再開するという温かい光景のはずなのに違和感と糸球体のような妙なからみかたをしている物質が心に根を張るような…、そんな感覚。
「やっと着いた!」
町は思っていたよりも遠かった。気持ちのせいもあるとは思うが幽かに残っている断片的なパズルのピースにはそんな絵はなかった気がする。
「ま、とりあえず、町に入ろう。何が起こっているかはゆっくりと考えれば…いい!」
僕は足を前に進めた。進めたはずだった。進んでほしかった。
ガーン…。と鐘が重々しく響く。
世界が揺れた。鐘の音は容赦なく淡々と同じリズムを刻む。そのたびに足元が一直線を保てない。
「な、なんだ…。これ。」
僕はその場に倒れた。倒れた先の地面を見る。触れてわかる。揺れているのは自分であったと。床は地球に沿っている。
そして、僕の視界がフレームの外から黒く染まっていくのを見届ける前に…。
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