第11話 変形はロマン
変形、なんと心惹かれる言葉だろうか。
ナントカ形態になるのだろうか、それともナントカフォルム?もしかしてナントカモード?
俺が妄想の世界に旅立っている間も、開発チームの面々の会議は続いていく。
「お嬢ー、でもパーツを変形させて組み直す方式だと変形するのに結構時間がかかりますよー?」
「それに、構造上脆くなる部分も出てくるじゃろう。変形ではなく、換装させるというのはどうじゃ。」
「オズワルド、続きをお願いしますわ。」
「共通の頭部と胴体に人型と獣型の二種類の異なる四肢を換装させるのじゃ。そうすれば、戦場に応じた機体になるじゃろう。」
「いい案かもしれませんわね……ああ、ダメですわ。今回の機体は前線向けの機体ですの。前線には機体を換装させるのに充分な設備がありませんわ。それに、使わない兵装を置いておく余裕も。」
ここはお嬢様の執事として、そして開発の補佐係として、何より1人のロボット好きとして助言をすべき場面だろう。
「お嬢様。機体だけで考えるのではなく、機体と兵装を合わせて考えてはいかがでしょうか。」
「もう!考えが思いついたのなら遠回しに言うのでは無く、きちんと言いなさい!ここにいるのは私を含めて全員、素人が意見を言う事に怒るような人間じゃありませんわ。」
怒られてしまった。
「申し訳ありません。では、俺からひとつ提案をさせていただきます。人型の機体に狼型の機体になる為の兵装を搭載するのはいかがでしょうか。」
機体の変形に時間がかかるのなら。換装する場所が無いのなら。遊ばせておく兵装がもったいないなら。
変形する為の、変形する兵装を、自分で全部持っていけばいい。
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あれから何日か経った。
変形する兵装についての細かい部分は着々と決まっていく。
もちろん、機体に関してもだ。
数日間を過ごしても、解析班の人達と会ったことはない。お嬢様曰く、「解析班の方々は解析をする事にしか興味の無い方々ですから。」らしい。
「ですから!変形後にはセンサー類を光らせるべきですわ!」
「お嬢ー、そんなロマン仕様を量産機に求めないでくださいよー」
「今使ってるのは試作機なんですから、良いじゃありませんの」
「お嬢様、解析班から脚部の最適な構造のデータが届きました。」
「今行きますわ!」
そして1ヶ月後。
その機体は一見すると普通の人型魔導兵器に見えるだろう。その脚部の形状と背面に背負った兵装が無ければ。
足部の形状はヒールを履いたように踵が上がった構造になっており、その先端はクローの様に地面を踏みしめる構造になっている。
この構造は、この後変形する際に大きく関係してくる。
そして、背面の兵装である。
人型の際は両端から生えたサイドアームと呼べる大きさのサイドクローが主兵装となる形態であるが、変形時にこの兵装は、大きく姿を変える。変形の際、機体は四つん這いになる様に前に傾く。その時、この兵装は変形後の頭部と前脚部になる。兵装の基部は前面に出て、サイドクローは大地を踏みしめる。
そして、人型形態での脚部はなんとそのまま獣形態の後脚部となるのだ。
その他にも様々な兵装が搭載されており、もう9割方完成と言っても過言ではない。
ハッキリ言ってここまでの物が出来るとは思っていなかった。しかも、こんな短期間で。
こんな短期間でできた理由は、構造についての最適解を解析班が導き出してくれたかららしい。会った事は無いけれど。
何はともあれ、機体は完成した。
後はこの機体をベネディクトが乗り回し、データを取り、それをフィードバックさせて完璧に近づけて行くだけだ。
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