第10話 獣と巨人

「どうぞ、ニーナ様。」

「ありがとう。……まぁ、次第点ですわね。この紅茶を飲み終わったら研究所を案内しますわ。」

「了解しました。」



ラボの廊下をニーナ様と共に歩く。

「ここが娯楽室と食堂ですわ、私のラボの皆さんは研究させているから誰もいませんけれど。それでここが………」


研究所の施設を見て回り、ニーナ様のラボに戻ってくる。


「そしてこの先が、ラボの研究区画ですわ。」

重たそうな扉にカードキーをかざして中に入る。


「この廊下の扉達は解析班の皆さんの部屋ですので、間違えて入らないようにしてくださいませ。この廊下の先が、ハンガーになっていて試作段階の魔導兵器が置いてあるんですわ。」

「魔導兵器…ワクワクしてきますね。」

「ふふふ…、あの子たちを見たら驚きますわよ?」


廊下を抜けた先には巨大なハンガー。

そこにいたのは、一匹の巨獣と二体の巨人だった。


「驚いて声も出ませんでしょう?この子達は次世代機開発のための試作機ですのよ。こっちの狼型のが1号機で、こっちの人型が0号機と2号機。2号機は0号機と1号機のデータを使った………ってイオリ、聴いてますの?」


「す、すいません。圧倒されてしまいました。それにしても凄いですね。これをニーナ様が?」

「私だけではありませんわ、0号機と2号機は所長が作られまして、1号機の開発主任と、これから作られる4号機の開発主任が私ですわ。0号機と2号機は開発のために貸し出されている状態ですわね、明日には返す事になると思いますわ。」

「失礼ですが、3号機はどうしたんですか?」

「3号機は違うラボが開発する事になっていますわ。さて、まずはここのスタッフの紹介をしますわよ。」


そう言うとニーナ様は階段を降りていく。

そして、1号機の元に辿り着くと誰かを呼び始めた。


「ゾフィ!オズワルド!ベネディクト!」


「お嬢ー、お呼びですかー?」

「なんじゃ、そんなに大声出して。」

「はーい、何ですか主任。」


1号機の中や裏から3人の人間が出てくる。

青い髪の少女と、背は低いが貫禄のある爺さん。そして、茶髪のチャラチャラした男だ。


いや、偏見はやめよう、茶髪の軽薄そうな男だ。


「3人にも紹介しますわ。こちらは私の新しい執事で、このラボでの補佐係を務める イオリ・クレイよ。」

「イオリ・クレイです。よろしくお願いします。」


「よろしくー、私の名前はゾフィ。メカニックと雑務をやってる。」

「儂の名前はオズワルド・ミナモト。メカニックしかできん。よろしく頼む。」

「俺の名前はベネディクト・カクトゥス。この開発チーム唯一のAランク適正者でテストパイロットをやってる。ま、普段はお荷物だけどな。よろしく。」


Aランク適正者?


「イオリ、Aランク適正者というのはですわね。AからFまで分かれている大型の魔導兵器を扱うためのOSに接続するための適正が一番高いってことですわ。ちなみに私はDランクですわ。」


「主任の言う通りだな。ま、適正が高いからって強いわけじゃないんだけどな。強かったらこんな所でテストパイロットやってないし。」


そりゃそうか。


「さて、ちょうど開発チームが揃った所で試作4号機について考えますわ。上からのお題は人型と獣型の長所を合わせたような機体ですわ。まぁ、無理難題はいつも通りですわね。」


「お嬢はもう解決案が出てるみたいだけど?」


「ゾフィは鋭いですわね、フリーゲの馬鹿は合体なんてアホな事考えてるみたいですけれど、才女の私は格が違いますわ。ズバリ、変形ですわ!」


合体!!変形!!

ニーナ様の執事になって良かった!!

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