第7話 帝都レーヴェラード
ノースオウル伯爵領から帝都レーヴェラードまでは車で2日の距離だった。
なんと、この世界には車があった。正確には魔導機巧車らしいのだが。
セラスの運転によって魔導機巧車は進み、日が暮れる前に滞在予定の街、ナザレに着いた。
「ここはノースオウル領ですから、街一番のホテルに泊まります。」
セラスの言う通り街一番の名に恥じない良いホテルだった。絶対に俺より礼儀作法は上だったよな…。
次の日の夕方、俺たちは帝都レーヴェラードに着いたのだった。
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「これが……帝都レーヴェラード…」
俺は圧倒されていた。
帝都の街並みは夕方にも関わらず、多くの人で賑わっていた。
建物は天を衝くように並び立ち、街を覆うように高い壁が築かれていた。中でも目を引くのは雲まで届きそうなほど高い城だった。
「あれは帝城ですわ。陛下はあの城の最上階にいらしゃって帝国の全てをご覧になっていらっしゃるそうですわ。故に今まで一度もクーデターが起きなかったとか。」
「そうなんですか、陛下の城ならあの大きさも納得ですね。」
「もう、そんな他人行儀に喋らないでといつも言ってるでしょう?」
「しかし、ニーナ様は俺の命の恩人です。命の恩人に対して無礼な事は出来ませんよ。」
「その命の恩人の願いですわよ。」
「そうなんですけど……えっと…」
俺が言い淀んでいると、セラスが助け舟を出してくれた。
「お嬢様、無理強いはいけませんよ。
それに、無理強いされた言葉より心からの言葉が聞きたいでしょう?
親しくなる時間はたくさんあるのですから、焦ってはいけませんよ?」
……助け舟かと思ったら外堀を埋められてしまった。
「ほら、着きましたよ。イオリ君は荷物とお嬢様をお願いします。私は車を置いてきますので。」
「分かりました、セラスさん。行きましょうニーナ様。」
こちらで習った礼儀作法を最大限に発揮してニーナ様をエスコートする。
ニーナ様は第一魔導機巧研究所の貴族向け宿舎に住んでいる。
貴族向け宿舎には従者用の部屋や、庭などの施設が付いていたり、宿舎は1人単位で建てられていたりと通常の宿舎と異なる。
そんな宿舎の庭を抜け、玄関に辿り着く。
セラスさんからもらった鍵で扉を開けようと荷物を置いた時、扉が内側から勢いよく開いた。
「お嬢様!!会いたかったです!!…って、うわぁ!?誰ですかこれ!?」
「私の新しい執事ですわ!イオリ!しっかりなさい、イオリ!」
勢いよく開いた扉に頭をぶつけた俺はの遠のく意識に聴こえたのはそんな声だった。
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