第2話彼女の場合

ノースオウル伯爵家三女である私、ニーナ・ノースオウルは伯爵令嬢の身でありながら帝国の[第一魔導機巧研究所]に努める才女。


いつもであれば休日も研究所で新たな魔導機巧の研究に没頭しているけれど、今日は別。


私の肩書きから見習いが取れ、正式に魔導機巧技師になったお祝いとして、お父様から屋敷の地下にある、用途不明・来歴不明の古代魔導機巧を解析する許可を頂いたのです。


家族と家臣団によるパーティーもそこそこに、私は件の魔導機巧の前に居ました。


「ここは……こうなって…うーんと……ふむふむ……なるほど…ここで周囲の精査を行なっているのかしら…?」


一人で作業をしていると独り言が多くなって仕方がありません。


「回路の流れ的にここが起点の様ですわね……?少し魔力を流してみましょうか。」


今にして思えば、この時の私は浮かれていたのです。そうでなければ、用途不明・来歴不明の扉型古代魔導機巧という、一目で地雷とわかる物に魔力を流すなんて事をしなかったでしょうに。


気付いた時には遅かったのですわ。

私の流した魔力を呼び水にして、周辺から無差別に魔力を吸い上げ始めた魔導機巧は怪しげな光を放ち始め、一際大きく光ると空間を大きく揺らしながら爆音をあげた。


「うひゃっ…! ……一体全体何ですの!?換気…換気……あった!」


光が収まった代わりに土煙が蔓延する地下室の換気装置を起動し、土煙を晴らすと古代魔導機巧のあった場所には、ひしゃげた元古代魔導機巧と見知らぬ男が倒れていた。


「お嬢様!!一体何があったのですか!? 」


爆音を聞きつけたメイド長が地下室にやって来たので事情を説明して彼の応急手当てを任せる。


結局、私は報告を受けたお父様に怒られ、地下室の古代魔導機巧の解析の許可も取り消されてしまいましたわ。


ですが、爆発の後に倒れていた彼は一体何者なのかしら?

顔も好みでしたし、もし行く宛が無いのであればこの前辞めた私の執事として雇いたいものですわね。

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