第29話 異変

会場に近づくと、やっぱり大勢の人達でごった返していた。

「す〜ごい人の数…。」

「あ、賢治君!あそこ出場の登録受付みたいだよ!」

クルトさんが木製の長机がたくさん並んでいる受付を指差したので向かってみた。

長机の前に立つと受付のお姉さんがプレイヤーの名簿リストを腕に抱えながら聞いてきた。

「ドラゴングランプリへの出場ですか?」

「あ、はい!」

「わかりました。それではここにあなた達のチーム名を書いてください。」

受付のお姉さんは俺に筆記用具を手渡した。

俺はサリア達と顔を見合わせた。

「そういや俺達、まだチーム名決めてないなぁ。」

「確かに…。う〜ん何が良いだろう…。」

クルトさんは顎に指を当てて考え出した。

う〜ん…。

みんなでその場で2、3分考えていると受付のお姉さんが困った表情で俺達を見てきた。

「あの〜…出来ればもう少し早く考えられないでしょうか…。あなた達の後ろに並んでる方々が…。」

俺は後ろを振り返った。

「おい若造!グズグズしてねぇで早くせい!」

「そうだそうだ!俺達も待ってんだからよ〜!」

ヤバイ後ろが詰まってる…。そりゃ俺がこの人達の立場だったら怒るわw

「もうこうなったら…。」

俺は急いでチーム名を記入した。受付のお姉さんは微笑む。

「ご登録完了しました♡」


「全くほ〜んとびっくりしたわ。チーム名が『フォー・ドラゴンズ』だなんて。センスなさすぎー。」

「しょうがないじゃないですかw急いで決めたんですからwそれに俺達4人でフォー・ドラゴンズ、良いと思いますけどね…。」

「どこがよ!w」

レイラさん不満タラタラだけどこれ多分怒ってないな。

「僕は良いと思うよ、フォー・ドラゴンズ。格好いいし!」

さすがクルトさん優しいフォロー!

「私も良いと思いますよフォー・ドラゴンズ。賢治君らしいですし!」

サリアまで!…って『賢治君らしい』って何だ?w

たわいもない会話をしながら歩いていると、いかにも入口っぽい場所が見えてきた。

「ほら、ヤマモトここよ。会場の入口。」

「すげー!!」

会場の入口の門は高さ10mはあろう巨大な木製の観音開きの扉で、開きっぱなしになっていた。そこから見える会場の中はスタジアムみたいで観客席には大勢の人達が詰めかけている。石造りだし、例えるなら古代ローマ遺跡のコロッセオ。

会場の雰囲気に圧倒されていると、再びアナウンスが流れてきた。

「まもなく…ドラゴングランプリを…開催致します…まもなく…ドラゴングランプリを…」

クルトさんは両手を腰に当てて意気込んだ。

「いよいよだね…」

「頑張ろう!」

一応のお手洗いを済ませ、俺たちは指定された待機席へと座った。しばらくすると会場が静まり、ブラスバンドによる開会の合奏が高らかに響き渡った。そして主催者らしき男の挨拶。

「会場の皆さま!!お待たせいたしました!!ドラゴングランプリの開幕です!!今日は大いに盛り上がりましょう!!」

場内の盛り上がりは最高潮。

「さて、それではさっそく闘技に入っていきます!まず最初のチームは『ブルー・グリフィン』!」

グリフィンって…レストランの前で倒した山賊もグリフィンって名乗ってた気が…。

「やっぱり来たか…。」

クルトさんも神妙な面持ち。

主催者は続ける。

「そして今大会からなんと新ルール!今までのドラゴングランプリは時間制で一定時間経ったら途中で戦闘にストップをかけていましたが今回からはチームにはモンスターを完全に倒しきるまで戦ってもらいます!途中リタイアは無し!狩るか狩られるかのデスゲーム!!」

…は?つまり死者も出る可能性が?

場内の反応は…。

「いいぞいいぞ!!!最高のルールだぜ!」

「っしゃあ!やってやろうぜ!!」

なんだこいつらみんな狂ってやがる。

「レイラさん、なんかこれおかしくないですか?」

「なんだか変ね。主催者は何を考えてるのかしら。」

「僕もおかしいと思う…。」

やっぱりレイラさんもクルトさんもそう思ってる。サリアは…?

「怖いよ…。」

すすり泣いてるじゃないか!こんな大会出たらまずい!!

「3人とも!もう帰ろう!こんなルールおかしい!」

「そうね。想定外よ!」

「死者が出る可能性があるなんて危険すぎるしね…。」

その通りだ。

「ほら、サリア、手。泣くなって。」

俺はサリアの手を握った。

俺達4人は急いで退場門に向かう。

しかしそこには驚きの光景があった。

「退場門が…!!」

大量の大タルや木箱、岩などで退場門全体が塞がれている!これじゃ開かない!!

「どうなってんだこりゃ!!」

「閉じ込められたってわけ?」

塞がれた退場門の前で4人で立ちすくんでいると俺達のことを見つけた主催者の男が場内アナウンスで言い放った。

「おっと…。会場から逃げ出そうとしてる馬鹿4人がいるみたいですねぇ…。」

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