第20話 フェリーチェの夜

「夕食は18:00からだからそれまで各自部屋で休もう。」

「それじゃまた後で!」

宿泊施設に着いた俺達は夕食の時間を確認し各自、部屋へと向かった。予約した部屋は2つで、一つをクルトさんとレイラさんで、もう一つを俺とサリアで使う。流石に4人で使うには狭すぎるしベッドが足りないからだ。

「ゲームの世界にも時間の概念はあるんだな…」

「賢治君何をブツブツ言ってるの?」

「ああ、いや何でもないよ。」

サリアも時間とかそういうものは知ってるんだろうか。でもサリアもクルトさん、レイラさんもゲームのNPCなんだよなぁ。いつどこで勉強したり学んだりしたんだろう。もしくは最初から知っているものとしてインプットされているのだろうか…。

ドンッ!!!!

「痛っ!」

「あははは!賢治君ったらもう部屋のドアに頭ぶつけたりしてさ!ドアノブ引かなきゃ入れないでしょ。」

「やべw」

考え事しすぎて赤ん坊みてぇなことしちまったwあまりあれこれ考えるのはよそう。

ガチャ…

「おお…」

部屋は8畳くらいで2人で一晩泊まるには十分な広さだった。

「私ここ!」

サリアはニコニコ笑いながら窓際のベッドに飛び込んだ。じゃあ俺も…!

「俺はこっち!」

ドア側のベッドに飛び込んだ。ふかふかしていて気持ちいい。人間というのは単純で、ちょっと心地良かったり嬉しい気分になれば嫌なことはすぐ頭から一時的に吹き飛ぶ。俺は今まさにその状態。

「ベッド気持ち〜な〜。」

「だね〜。」

なんだか気持ち良くて眠くなってきた。このまま少し眠ろうかな…。



ドンドンドンドン!!!

「ヤマモト!!夕食の集合時間過ぎてるわよ!サリアも!」

「2人とも早く出てきて〜!」

部屋の外からレイラさん達の声が聞こえる。

やべ、つい寝すぎてしまった!サリアを起こさなきゃ…って、あれ…?

「………!」

「え?w」

今サリアが俺の顔をじっと見つめていた。何故?

「なんだサリア先に起きてたなら起こしてくれれば良いのに〜!」

「あはは、ごめんごめん!(賢治君の寝顔が素敵だったからだなんて、口が裂けても言えない…。)」

変なサリア。ま、いっか。

「んじゃ、夕食行こうぜ!レイラさん達待ってるみたいだし!」

「そ、そうね!」

そう言って俺とサリアは部屋を出た。

「アンタたち遅い〜!」

「ごめんごめんすぐ行こう!」

「夕食の会場はあっちだよ。」

「ありがとうクルトさん。」

廊下を進むととても美味しそうな匂いがしてきた。

「うまそうな匂い!」

「それもそうよ!ここはディナーが美味しいことで有名な宿舎なんだから!」

レイラさんは得意げに話した。

そして夕食の会場に到着。他の宿泊客の人達も来ているようだ。

テーブルの席に座るとさっそく料理が運ばれてきた。

「「「いただきます。」」」

4人で挨拶し、まず肉にかぶりつく。なんだこの美味さは!溢れ出る肉汁!香ばしい焼き加減!続いてサラダも食べたが、新鮮な野菜のみずみずしさがそのまま感じられる素晴らしいものだった。スープも言わずもがな。ゲームなのに、なんて味覚が鮮明だ…。

その後も夢中で夕食を食べ、会話を楽しみ、あっという間に夕食の時間は終わった。

「みんな食べ終わったことだし、部屋に戻ろうか!」

クルトさんの言葉に皆頷いた。

部屋に戻る途中、俺はふと思った。こんなに楽しくていいのかと。これじゃまるで旅行に来ているみたいだ。でもゲームってのはそもそも楽しいものだし、まあ良いのかな…?

自分の中で納得するしかないが。

「じゃあ明日の朝10:00にエントランスに集合ね!」

「ヤマモトたち明日は遅刻するんじゃないわよ〜?」

「わかりましたよwそれじゃ、おやすみなさい!」

「おやすみ〜」

簡単な会話をし、部屋に戻り、ちゃっちゃと明日の支度を済ませた。面倒な事は先に済ませておいたほうが良いに決まってる。

「なあサリア、明日10:00に集合って言ってたし起きるのは8:00でいっかな?」

「……」

サリアの反応がない。俺は妙に嫌な予感がしてすぐさまサリアのいる方を見た。

「なんだ…。」

サリアはベッドで死んでるのかと疑うぐらいにぐっすり眠っていた。

「ふぁ〜あ、俺も早く寝よっと。」

俺は大きくあくびをしながら自分のベッドに入った。よく考えてみたら自分と同い年ぐらいの女の子と一緒の部屋で寝るってなんだか新鮮だな…。姉や妹がいるわけじゃないし。

俺は横になりながらそっとサリアの方を見た。すやすや寝ている。…可愛い。そんなことを思っているうちに俺もいつの間にか眠っていた。

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