第18話 2度目の世界
風が吹いている。見上げると空には雲があり、遠くに鳥が数羽飛んでいる。
周囲を見渡せば山々があり、木々もある。
一度見た景色。
「やっぱりゲームの振り出しに戻されたんだ…。ということは…?」
俺が独り言を言いながら振り返ると…
「あなた…ここで何をしているの?見かけない顔だけど…」
やっぱりだ、サリアだ。それにセリフも一度会った時と全く一緒。マニュアル化された彼女のセリフに、俺は今自分がいるのがゲームの世界であるということを痛感させられた。
俺はとりあえず反応してみる。
「ああ〜えっと〜君はサリアだよね?俺のこと知ってる?」
「知ってるわけないじゃない!それにどうして私の名前を知ってるの?怖い…。」
それもそうか。だがもう一度自己紹介をして家庭事情を解決して…って同じことをやる気にはなれない。何しろ俺は面倒くさがり。現実世界にいた時もろくに学校の宿題をやったことはない。
俺はサリアの腕を掴んで言った。
「俺は山本賢治。お前の親友になるはずだった男だ。俺はお前と一緒に魔王を倒さなければならない。一緒に来てくれないか?」
直球だった。彼女は戸惑っている。
「え…そんなこと急に言われても…。魔王を倒す?私が?あなたと?ちょっと何言ってるのか全然わからないわ。」
まあ無理もない。しかし時間がない。ここはひとつ強引にでも…!
「なあサリア頼む!協力してくれ!!」
俺はサリアの腕を掴んだまま肩に寄せた。
すると彼女は予想しなかった行動に出た。
「きゃあああああああああ!!!!不審者!!!触らないで!!!!」
悲鳴をあげたのだ。これはまずい!こんなだだっ広い野原で叫ばれちゃ、近くの街の人達に聞こえちまう!!
「ちょ、静かにしろって!街の人が来ちゃうだろ!」
「「おい、サリアのそばにいる男、怪しいぞ!誰だ!!!」」
「「サリアから離れろ!!」」
案の定だ…!街の人達がもう来やがった!こんなつもりじゃなかったのに…。どうすりゃいいんだ…!!
「サリア!と、とりあえず付いて来い!」
「「ああっ!あの男、サリアをどこかに連れて行く気だ!奴を射殺せ!!」」
「「お、おう!任せとけ!」」
俺は彼らの言葉を聞いてぞっとした。
「射殺す…?」
するとその瞬間目にも留まらぬ速さで弓矢の矢が放たれ、俺の身体に命中した。かと思ったのだが…。
「うっ!!ゲホゲホ…」
嫌な予感がした。俺はゆっくりサリアの方を見た。
俺の目の前でサリアがゆっくり倒れこむ。
「サリア!!!!!」
「「おいお前どこ狙ってんだ。サリアを射ってどうする!?!?」」
「「やべっ!サリアが…」」
サリアは俺に目を合わせないまま、息を引き取った。
「おんのれえええ街人共!!!!!!!」
俺は弓矢を放った街人達の方へ向かって全速力で駆け出した。腹が煮え繰り返る程の怒り。流れ弾でサリアが死ぬなど許されない!許されない!許さない!!
「「お、おいあの男俺たちの方へ向かって来るぞ!ここから逃げよう!」」
「「いや、待て。サリアを射殺しちまった以上、ここで街へ逃げ帰ったところで処刑は免れない。なんならあの男も殺そう。」」
「あいつらぶっ殺す!!!!!」
しかし走っていた足に急に力が入らなくなった。
「「命中♪」」
「「やったぜ。」」
「(んな!!!)」
続けて2発、俺の身体を矢が突き刺す。
「ああ、あああああ、あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
俺は完全に力を失った。
そして再び俺の視界は真っ暗になった。
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