第15話 レベルアップ

訓練所の中は、薄暗い「エントランス」とその奥の「訓練スペース」に分けられてるようだ。訓練スペースは割と広い。まずエントランスで受付してから訓練スペースに移動して訓練開始…現実世界でいうバッティングセンターと同じようなシステムだな。

エントランスに入ると、レイラが俺達の人数分の入場券を買ってきてくれた。

「ありがとうございますレイラさん!」

「礼はいいわよ。訓練頑張りましょ。」

いよいよ訓練開始だ…。

俺達は訓練スペースに入り、さっそく自分の武器を構えた。なるほど…クルトさんは斧使い、レイラさんは弓使いか…超かっけえ!

んで、俺は…。

俺はアイテム欄を開き、サリア父から貰った武器を数種類取り出してみたが何が自分に合ってるのかがわからない。クルトさんに聞いてみるか。

「クルトさん!俺、色々武器持ってるんすけどどれが良いっすかね〜」

「そうだな…武器を使うのは初めてかい?」

「はい!あ、短剣なら1度だけ…」

「短剣か…なら、まず片手剣を使って見ると良いと思うよ。片手剣は軽くて小回りが利くから入門武器としては最適だよ。」

「ありがとうございます!」

俺はアイテム欄から『片手剣』を探した。

あったぞ!さっそく文字をタッチ。すると目の前に片手剣が出てきた。

「おお〜!きたきた!」

右手に剣を、左手に盾を持つスタイル。剣の長さは40cmぐらい、盾は60cmぐらいか…。持ち手は革製になってて、握りやすい。

俺が片手剣を手にして興奮しているとサリアが話しかけてきた。

「私は、どの武器を使うと良いのかな…?」

「う〜ん…俺と同じ片手剣使ってみるか!ほら、もう1個あるから。」

俺はそう言ってアイテム欄から片手剣を出し、サリアに渡した。

「ありがとう!使ってみる!」

「おう!」

訓練スペース内にさっきの所長の声が響く。

いよいよ訓練開始みたいだ。

「「それでは戦闘訓練を始める!!まずは準備運動代わりにリトルボアー5頭の討伐!!用意!始め!!!!」」

所長はそう叫ぶと、訓練スペース内の壁に設置されたレバーを勢いよく引いた。その瞬間、俺達の前方20mぐらい遠くに見える柵が上がり、5頭の猪が猛スピードでこちらに向かって来た。あれがリトルボアーらしい。

レイラさんがクルトさんに微笑んで言う。

「クルト!いつもの作戦!」

「りょ〜かい!!」

そう言うとレイラさんは背中に背負っている弓矢を2、3本取り出して弓に装着し、弦を強く引き放った。矢はリトルボアー数頭に見事に命中。リトルボアーが弱りを見せたその時、クルトさんは斧を構えてダッシュで駆けていき勢いよく斧をぶん回した。するとリトルボアー5頭は一瞬で倒れた。

「すげえ…」

俺が呆気にとられているとレイラさんが俺とサリアに向かって言った。

「まだリトルボアー5頭は死んでない。瀕死ってところだ。倒すと倒した者が経験値を得ることができる。アンタ達がトドメを刺しにいきな。」

「わ、わかりました!行くぞサリア!」

「うん!」

俺とサリアは片手剣を構えながらリトルボアー5頭の元へと向かった。近づくと、確かにまだ息はしている。これを刺すのか…なんか罪悪感が。まぁでもゲームだし、いっか。

俺は片手剣を逆さに持ち、真下に向かって刺した。するとその瞬間リトルボアーは短い電子音と共に消えた。

「シンプルだな。」

残りの4頭は俺が2頭、サリアが2頭刺した。いずれも同じように電子音と共に消えていく。そして俺とサリアの体に青白い光の玉が入ってきた。

「お、これが経験値か。」

俺はアイテム欄を目の前に出し、自分のステータスを確認してみた。Lv,2と表示されている。

クルトさんが駆け寄って声をかけてきた。

「レベルアップしたみたいだね!その調子でレベル上げしていくといいよ!」

「ありがとうございます!!」

俺、サリア、クルトさんの3人はレイラさんがいる方へ戻った。

「レベルアップおめでと。」

レイラさんもそう言ってくれた。

「ほいじゃ次の訓練いくぞ〜。次のモンスターはギガントボア。よいしょっと。」

所長は俺達が休むまもなくレバーを引いた。

声かけ叫んでないけど疲れたのか…?w

俺達は再び前方の柵を見る。だがさっきと様子が違う。溢れ出る大物感。訓練スペース内に雷鳴のごとき足音が響く。

しばらくしてギガントボアが姿を現した。

「なんじゃこりゃあああ!!!」

俺は驚いた。高さ20mぐらいはあるであろう大猪がゆっくりこちらへ向かってくる。

「ギガントボア。さっきのと比べ物にならないから気をつけな!」

「僕とレイラが前衛になって奴を弱らせるから、賢治君達は後衛を頼む!それじゃ!」

2人はそう言ってギガントボアの方へと駆けていった。

「お、俺達も行こうサリア!」

俺はサリアを促したが、サリアはギガントボアを見ながら立ちすくんでいた。彼女の体は震えている。

「け……け、賢治君…こここ怖いよぉ…」

サリアは泣きそうだ。

どうすれば…。


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