第11話 希望
俺はテーブルの席に座り、しばらくぼんやりと考えていた。この世界についてや、魔王について。ってか魔王ってそもそもラスボスなんだよな…?という事は俺が最初に出会ったドラゴンは魔王の城の門番って事か…
「おい、夕飯できたぞ。」
サリア父はそう言って俺とサリアの目の前にシチューが入った木製の器を置いた。とてもいい匂い。美味そう。
「「いただきます!」」
俺とサリアはシチューを夢中で食べた。味付けも良いし、食感も素晴らしい!
「超美味いっすね!」
「そうか。それは良かった。まだおかわりあるから、慌てなくて大丈夫だぞ。」
「はい!」
その後サリアは1杯、俺は2杯おかわりして夕食を終えた。
「「ごちそうさまでした!!」」
ここでサリア父がさっきの話を切り出した。
「賢治、魔王と戦うのはもう一度考え直してからの方がいい。俺もお前に死んでほしくなんかないんだ。」
「でも、俺は絶対に魔王を倒さないといけないんですよ。あ、そういえば屋根裏部屋にあったあなたの本に魔王の城のドラゴンが描かれてたんですけど、どうしてですか?」
「見たのか…。」
サリア父はそう言うと、さらに真剣な表情を浮かべて続けた。
「実は俺も昔、仲間数人と一緒に魔王に挑んだことがあるんだ。魔王の城の財宝目当てでな。だが、いざ城に入ろうとした時に目の前にあのドラゴンが現れたんだ。どうやらあのドラゴンは魔王の城の門番らしい。で、戦ったものの見事に完敗したんだ。圧倒的な力を前にして、俺が作った自慢の武器も全く歯が立たなかった。屋根裏部屋の本のドラゴンはその時を思い出して後日描いたんだ。」
「そうだったんですね…」
サリア父も魔王に挑んだことがあったとは意外だった。つまり門番のドラゴンを倒さなければ魔王に挑む権利すら貰えないってことか…。
するとサリア父は何か思い出したかのように再び話しはじめた。
「そうだ。魔王を倒す方法が一つだけあるかもしれない!」
「本当ですか!?」
「ああ。この街からずっと西の方角へ進んだところに『ウィルダネスタウン』って名前の大きな街がある。まぁ読んで字の如く荒野に囲まれた街だ。そこで一年に一度『ドラゴングランプリ』っていう大規模な大会が行われるんだ。」
「ドラゴン…グランプリ?」
「そうだ。その大会で優勝すると、絶大な威力を持つ剣がプレゼントされるらしい。ひょっとしたら、魔王討伐に役立つかもしれない。」
俺はそれを聞いて身を乗り出して言った。
「やります!!俺、その大会で優勝します!
それでその剣をゲットします!!!」
もはや考えている暇など無い。魔王を倒せるなら、何だってやってやる!
するとそれまで黙って話を聞いていたサリアも口を開いた。
「私も!賢治君と一緒にその大会に出て力を貸したい!!」
「ありがとうサリア!」
俺とサリアは希望に満ちた笑顔を浮かべている。俺たちの言葉を聞いたサリア父も、笑みを浮かべた。
「わかった。その大会に出るといい。出るからには精一杯頑張れ。大会までならサリアも付いていく事を許可する。サリア、賢治を支えてやれ!」
「やったなサリア!」
「うん!一緒に頑張ろうね!」
こうして俺とサリアの『ドラゴングランプリ』出場が決まった。これから忙しくなりそうだ。
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