第9話 情

驚く俺を見て、サリアも驚いている。

「強そうなドラゴンね!」

「俺、前にこのドラゴンを間近で見たんだ」

「え!本当に!?でもどうやって!?」

「俺、サリアと会った時にリサシテーションルームってところから来たって言ったろ?」

「うん…」

「で、そのリサシテーションルームには何個かワープホールみたいなのがあって、そこにダイブしたらドラゴンの目の前にたどり着いたんだ。そうだ、俺がこのゲームの世界に入った目的は魔王を倒して現実世界に帰るためで…」

「げいむ?えっと…賢治君…何を言ってるのかよくわからないよ…」

サリアは戸惑った表情をしている。俺がいっぺんに話しすぎたか…。

「それに『げいむの世界』ってどういう意味?ここは紛れもなく現実よ?」

「いや、ここはゲームの世界なんだ。俺は現実世界からやってきたプレイヤー。俺が再び現実世界に帰るにはさっきも言ったけど魔王を倒す必要がある、らしい。俺もよくわからんけどね。」

いや、まてよ?よく考えてみたらゲームの世界にしては空、木々、花、それに俺の目の前にいるサリアも、全部がリアルすぎる気がする…。これは一体どういうことなんだ…。

「賢治君…。あなたはどこからやって来たの?」

「なんだか俺もわからなくなってきた…。でも、ここはゲームの中のはずなんだ。それだけは言える…と…思うけど…俺は…」

俺の言葉が段々と説得力の欠けたものになっていく。するとサリアが優しく話し始めた。

「賢治君がどこから来たのかは私にもわからないけど、絶対に悪い人ではないと思うわ。だから元気出してほしい。」

「あ、ありがとう。」

「その魔王ってのを倒せば、賢治君は元いたところに帰れるの?」

「多分…」

俺が自信無さげに言うとサリアは微笑んでこう言った。

「それなら魔王を倒すの私も手伝うよ!私、賢治君の力になりたい!!」

「え!本当か?で、でもサリアは武器屋を継いで花も売るって決まったんじゃ…」

「いいの!賢治君が困ってるのに私放っておけない!私も協力したいよ!」

なんて優しいんだろう。そりゃ、俺が食虫植物のバケモノからサリアの命を救ったのは確かだけど、でも自身の叶えたい夢を置いといて俺なんかの力になってくれるなんて…。

「サリアありがとう!!一緒に魔王を倒そう!!」

「うん!頑張ろう!」

俺はサリアの協力を得ることにした。

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