第6話辛辣すぎるのもいかがかと

 そして、巫女さんたちの口利きもあり、俺は、湯上の観光協会で初めての湯上温泉町観光会議をした帰り、俺は、大きなため息をついた。

「はぁ……なんだ、ありゃ」

「だから言ったじゃない。ろくなものじゃないって」

俺は、那奈美と七重、三人で帰路を歩いていた。俺のため息に、那奈美は、呆れた様に頭を掻く。

「那奈美の言う通りじゃ。いつもあんなくだらない会を開いておるからこの町は衰退したのじゃ。妾が、宗吾に助けを求める理由、分かってくれたはずじゃ」

「そうだけどさ……」

湯上観光協会とは言っているが、ほぼ自治会の集まりのようなもので、形式上の会議だけする会とは、七重から聞いていた。

しかし、その後、ご近所同士の馴れ合いで食事会をするだけの組織とまでは聞いていなかった。あまりにひどい内容で、俺は、美夜と幸さんにご近所付き合いを押し付けたとこであった。

「まあ、宗吾がため息をつくのも分かる。私、ああいう馴れ合いって大嫌いだもの。故に田舎者は総じて嫌い。この町の人間も嫌い」

「那奈美……主も立派な田舎ものじゃろ」

「七重様!私の体は、確かに田舎者だけど、心は、アキバに売った女です!あんなちんけなゾンビ集団と一緒にしないでください!」

「なあ、宗吾オタクとは、皆こうなのか?」

「そんな訳無い、那奈美が特殊なんじゃないか?」

「わ……私は普通!至って普通なヲトメですから!」

こうして、始まる愚痴大会。しかしよくよく振り返ると、ただの友達の少ない奴らが文句を言っているだけの会の様になってきていたので、俺は、少し話題を変えてみる。

「そう言えば、七重は、ずっと湯上にいるのか?」

「ん?妾か、そんなことはないぞ。巫女がいれば、長期間でないにしろ、外出は可能じゃ。ほら、神は、出雲で十年に一度、会議をするからのう。その間の土地を収める役目に巫女がいるのは、妾が安心して出雲に行くためでもある」

あぁ、そんな話あったな……しかし本当に八百万も神様がいるのか……。しかし、暢気な七重に比べて、那奈美は、少し不機嫌そうな顔をする。

「七重様が会議のたびに居眠りして怒られるのは、私たち巫女も同じなのです。次回は、寝ないでくださいよ」

「だって……アイツら、話すことが何年たっても同じような事ばっかりなんじゃもん。妾の気持ちにもなってくれ」

「はあ……うちの神様がポンコツ過ぎる件について」

……この巫女候補にして、この神ありか。ポンコツなのは、二人とも同じような気がしてしまう。

「なによ、宗吾笑っちゃって、気持ち悪い」

「笑ってないぞ」

「笑っていたわよ!ねえ、七重様!」

確かに面白い話だったが、これなら、一ノ瀬の方が笑える。しかし、そんな俺の予想とは発言とは裏腹に、七重も同意してくる。

「確かに宗吾は笑っておった。少し気味が悪いが、宗吾の中にいて、コイツが、笑うことが本当に苦手だと分かっておったからな。うむ今のは、無意識に出るやつじゃのう」

「気味わるいのかよ」

「最高にキモイわ!卑屈な塊ね!」

「那奈美に初めて笑顔を向けられた気がするはずなのに嬉しくない」

満面の笑みでキモイって言われたら、誰だって傷つくということを、那奈美は、分かっていて言っているんだろうが。

「まあ、宗吾の笑顔の気味の悪さは、置いといて。どうするのじゃ?頼んでおいてこういうことを言うのは嫌なのじゃが、観光協会の集まりに出ても地方創生は、不可能だと思うのじゃが」

頭が痛くなるような、質問をしてくる七重。確かに、このままただ、観光協会に出入りするだけでは、いつまでたっても地方創生は、不可能。

そう言った時は、昔とった、杵柄……と言ってもそこまで昔ではないが、まだ俺が億単位の金を動かしてきたノウハウを生かすしかなかった。

「まずは、情報収集をして、現状で実現可能限界を調べて、それに合った計画を練るしかない」

「しかし、伸びしろと実現可能限界では、きっと何もできないぞ?」

土地神様……もう少し自分が治める土地の民くらいもう少し信じてあげようよ……。

「……なあ、七重は、どうすればお金は。儲かると思う?」

「それは、良いものがあれば売れるだろうが……」

「逆。商品そのものに価値があると消費者に思わせるものだ」

そう、まずは、現状を認めなくてはいけない。

湯上の土地は、お世辞にも交通の便はよくないし、名物の温泉だって、都会からもっと近い所にいい温泉がある。正直、死んだウチの両親ぐらい温泉マニアじゃないとこんなところには来ない。

だからと言って、お金は無限にある訳でない。電車の本数を増やすのにも時間と金がかかる。それなら、どうやって、地方創生をするか、それは、湯上の地に価値あると思ってもらうしかない。

「詐欺師じゃな!」

「控えめに言って最低。本音を言えば、死ねばいいのに」

考えるのは、得意だが、こうやって気を抜くと、説明を省いてしまう癖……直さないと、いい加減、七重と那奈美の罵倒で心が折れそうになる。

「分かった。ちゃんと説明するから、そんな冷めた目で見ないで。俺、挫けて死んじゃう」

俺が、一から考えを説明したが、二人からの理解を得られる頃には、もう家に着いてしまっていた。

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