第12話 戦場
起きるとまだ日も出るかというところだが宿場町は賑わっている。もちろん昨日のキメラが倒されたと知って急いで出発しようとしてるのだろう。情報屋はあの商人だようで起きたのを見た我々に儲けた儲けたと張り切り自分たちも皇都に向かおうと言う。
馬車は行く。皇都に向かってひた走る。皇都に名前はなく単にユーラウス皇都またはそのまま皇国とも呼ばれている。数十万の人と亜人で作られ強いものはリザードマンでも望むなら将軍になれる。無論それなりの礼儀作法は必要だ。完全実力主義の国で文官にも亜人はいる。もっともそれは最上位にのみ適用される例外といったもので皇都や各地域の長はどうやっても人間族が独占しており武人は力の優劣で完全に上位付けされ皆良しとしても亜人の文官などはどうしても小さな派閥になり苦労しているとも噂に流れ聞くと、商人は観光ツアーの案内人のように我々に喋り続けている。私以外の三人は眠りこけていて客は一人だが彼は気にもせず説明を続ける。亜人に対して差別はないと表向きは言っても確実にあり亜人の入都には幾らかの賄賂が必要な場合が多々あり問題にもなっているが当然ながら抜き打ち検査がやってくる日にちなどは完全に筒抜けでその日だけ何事もないという事が繰り返されている。他にも亜人の旅人なら亜人地区にさっさと行った方がいいと、そのままいると直ぐに絡まれるし兵も助けに来ない。いくらゴールドランクでも下手すりゃ言い訳無視して監獄行きと嘘か真か噂話のようだ。
そして今私たちはその監獄にいる。門を通るのは勲章を見せて一発だったが商人の警告を全く聞いていなかった三人は皇都見物に出かけ見事に絡まれたのである。それがただのゴロツキならよかったのだが寄りにもよって自らを皇国第七位の皇子と名乗る男だった。皇子は昼間から酒に酔い付き人も皇子のイエスマンとして全く問題にしていなかった。またベリアスと比べれば実力も大きく劣っていると私も含めて分かる。皇子はよりにもよってエリルとファリーシア二人に目をつけた。
「おい、そこの爺、そのエルフ二人幾らだ、倍、いや五倍だすぞ。俺に売れ」
付き人に肩を貸されてやや呂律の回らない物言い。そして自分たちを勝手に売り物呼ばわりされ侮辱されたと分かりエリルがナイフを抜こうとするのをファリーシアは軽く制して皇子に近づいていく。皇子は自分のものになりに来たと勘違いしているその顔に彼女は死なない程度に軽く右のストレートを放つ。付き人もろとも酔っ払って出てきたと思われる宿屋の扉に突っ込み思惑通り鼻だけが大きく潰れ血反吐を吐きながら兵を呼ぶ。
「ふざ、けんなよ。俺は、皇国、第、七、位、の皇子様なんだよ!てめえら殺せ」
物騒なことをわめき散らすと正規兵とは違う普通の兵が取り囲む。ファリーシアだけでなくともこの囲みを突破することに何の心配もないが人間界に来て早速お尋ね者は嫌だと他人事のように周囲からはボケたように天を仰ぎ見ていると。二度あることは三度あると思ったようにもう一人の皇子が付き人も従えずにへらへら顔のままいつの間にか囲みを突破して場の沈静化を図る。
「私は第四位のベリアスだ。兄君のジャックスは酒に酔い無礼な言動をしたのを私は見た。その上であっても彼女の一撃は過剰のように思える。しかしここは私の裁量で決着する。文句がある者は前に出よ。実力で持って分からせる」
顔はへらへらしたまま空気が重くなり周囲の兵は構えをやめてベリアスに敬礼をして去っていく。ジャックスの方はベリアスを見ながら覚えていろと言いながら付き人と去っていく。
「文句がお有りなら次に開催される継承戦で私を抜けばよろしい」兄君の逃げ帰る背中に明らかな侮蔑の感情を含めて投げつける。
「さて貴方達の処遇ですが、問題を起こしておいて私の一存でお咎め無しも駄目ですから大人しく監獄まで着いてきて下さい。何、すぐに出しますよ」
そういうと手を上げガインギルと正規兵が現れる。そして今に至るわけだ。もっとも装備その他全ての荷物は没収されていない。今は監獄とは言っても取調室にしては快適すぎる部屋に通されている。その部屋の中央にある豪華な机に座るのはベリアス皇子だ。横には付き人のガインギルが我々に目を光らせる。
「この監獄は私の管轄なんです。もともとギデガスも腕が錆びつかない為に捕らえに行った訳ですが先んじられたのです」その後のキメラも帰るついでにと行けばまたもやとおどけて軽く手を広げお手上げのポーズをする。
「そして帰ってみればまた出会う。運命ですかね」
へらへら笑うもののこの場に通された真意が分からない。そう思っていると指を鳴らしガインギルが水晶の玉を取り出して机に置く。皇子が手をかざしかすかな魔力を感じるとこの国、周囲の地図が平面図で縦に映し出される。彼は地図の東を指差しながら簡単に説明する。地図上のポイントには西にユーラウス皇国、東に蛮族とある。蛮族は特定の名前を持たず自然との共生を謳い集まっているという。聞く限りではエルフのようなものを想像するが実際は自らの意見に賛同しない者を力づくで従わせ武力によって勢力を伸ばしているようだ。
「皇国は今この現在も戦争中なんです。第四位までは正規兵と大きな権力を持つことが許されますが当然ながらお分かりのように戦争に行かなくていけません。そこで貴方達は僕の私兵として参戦してください。いや、参戦を命じます」
そこで一息ついて我々の出方を見る。私は軽く皆を見るがやはり反応は薄い。ドゥガンは一応思案しているようにも見えるがファリーシアはふんぞり返りエリルはまたも置かれている菓子を食べている。全く話を聞く態度でなくガインギルが注意しようとするが皇子が制する。しばらくヒゲをいじっていたドゥガンはようやく口を開く。
「それで俺たちの皇子暴行事件は無しってわけだな。俺は別にいいぜ」一応皆の意見を聞こうとするがファリーシアもエリルもドゥガン隊なんだからと特に気にしない。次に私に目が向くが三人がいいならと頷く。
「よかったあ、断れたらどうしようと思って緊張しましたよ。あ、それとこれは命じると言いましたがゴールドランクの冒険者に対する依頼という形にします。更に無事に終われば昇格させます。貴方達の腕なら問題ない戦いですよ」
そう言うと既に用意していたのか依頼書にサインしてガインギルを通じてドゥガンに渡される。皆一応見るが依頼書に期間が今すぐと書いてある。四人が今からかとベリアスを半睨みしているがへらへら顔を崩さずに部屋の扉を開けて着いてくるように促す。気乗りしないが一応は皇子を公衆の面前で殴り飛ばした罪を無くしてくれて、そこまで固執してはいないが冒険者のランクも上げてくれる。まあ、いいか。
戦と言うからには既に兵が外に集められているのかと思っていたがどういう訳か監獄を出ずに下へ下へと向かっている。通り過ぎる兵が皆、出陣や戦果について祈り敬礼していく。どのくらい下りたかと考え始めた頃に最下層の広間についた。広間には巨大な扉があり奥からおかしな音が聞こえてくる。兵は敬礼して扉を開ける。するとそこには更に巨大な複数の魔法使いによって開けられた穴、ポータルがある。その先には今まさに出撃せんと大軍がひしめき合っている。入らないのかと見ているとポータルから人、それも明らかに位の高い人物と見受けられる装備をまとった者が出てきた。
「第一位皇子 ユーラウス・ハインデル様、ご帰還!」
屈強な肉体からは剛勇、不撓不屈を合わせたオーラを放ちながらベリアスに近づいてくる。手も触れるほどまで近づくと彼は一気に破顔し親しげに抱きつき握手しあう。後ろにいる私たちまで気軽に挨拶をし握手してくる。オーラは消え気さくな武人という印象だ。
「はははは、久しぶりだなベリアス。元気そうでなによりだ。なるほど、そちらの方が今回の切り札か凄まじいものだ。一体どこでこれほどの傑物を見つけてきた」
先程の握手で実力を見定めたようだ。ベリアスは簡単な経緯を話した。彼は強く頷き運命だと納得している。意外と単純な人間なのかもしれない。世間話に花を咲かせていると遠慮がちにガインギルが割って入る。
「申し訳ありません。積もる話もありましょうがポータルの維持もあります。続きは帰ってきてからにして頂けないでしょうか」そういえばハインデルの付き人はいないのかと思っているとこちらを見透かすようにベリアスがハインデルの付き人は軍師として常に戦場へ出ていると教えてくれた。
「仕方ない。続きはまただ。死ぬなよ」顔は引き締まり彼の身を案じてもう一度強く握手しあう。
「心配しなくても僕は兄君と違って簡単に前には出ないから大丈夫ですよ」
へらへら顔はずっと崩さずとも意気込みは伝わる。彼もハインデルの手を強く握り返す。そしてポータルに走り着いてくるように言う。一瞬の光と共にポータルの外に全員出たのを確認してか閉じられた。眼前にはポータルから見るよりも迫力のある大軍の勢いが伝わってくる。
これまでの事を考えるといきなり前線に出されてしまいそうな気がしたが杞憂だった。先ずはハインデルの付き人である軍師のピルスがいる総大将のテントに入る。ピルスは聡明で理知的で若干冷たい印象のエルフだった。お互い簡単な挨拶を交わしてどこでどういった事が起きて幾つかの作戦の進行といったことを彼女から聞いていくベリアス。私も含めて四人が全く話に興味がない。全てを聞き終わりベリアスは目を閉じ考えている。こちらをハインデルの言っていた切り札と言うのだからどこかで使うということでも考えているのだろう。十数秒の間が空き彼の目が開かれる。
「北へ行く。ポータル準備せよ」兵が敬礼して飛び出る。
「北からの進軍はほぼ無理と説明したはずですが」
ピルスがまた始まったかとでもいうように冷静に指摘する。どうやらベリアスは苦しい道を進むのが好きなタイプのようでへらへら笑いながらそっちの方が面白いことになるでしょうと軽く言う。出て来たところへ戻るとポータルが既に出現している。こちら側から見える北の戦地はどうみても膠着状態どころかどうやって兵を相手側へ入れるかという問題に見える。
ポータルを抜けて北の戦地に立つ。兵の士気は悪い。それも当然で相手は深く広い崖の先に砦を建設している。こちらまで届く跳ね橋まであるが全く進軍してくる気配もないどころか投石機での攻撃もない。しかし確実に砦はあり兵は常駐させなくてはならない。おそらく士気が落ちるところまで落ちここから南で敵の大進軍の作戦でもあるのだろう。それが成功すると同時に攻め込む腹なのだろう。ベリアスは砦を見ながらまた考えている。
「さて、どうやって砦に行こうか」
ここに来ることだけ考えて何も考えていなかったのかと誰もが突っ込むがガインギルだけはまるで何時ものことのように呆れている。皆に意見を聞こうとするも鉤縄を使っても付いたそばから落とされ急ごしらえの長はしごも強度が足りず衝撃で折れてしまったという。それでも相手からの反応は不気味なほどなく本当にあの砦に軍と呼べる数がいるのか疑心暗鬼になっているようだ。
「はい、ファリーシアを投石機で飛ばして突撃」
エリルからの文字通りぶっ飛んだ提案はボツになった。別にファリーシアはそれでもいいと言ったが投石機を組み立てようとすると必ず邪魔をされるそうだ。時間と兵力を割いてもいいがそこを突かれたくはない。ついでにファリーシアでもこの距離は飛び越せないようだ。私はそこでただの思いつきだったのだがそれを言ったら採用されてしまった。
「風の魔法でファリーシアを吹き飛ばしてというのはどうじゃろう」
そこまで飛ばせるかどうかも分からないのにドゥガンもエリルもファリーシアも簡単に了解したのを見てベリアスも試す価値ありと判断した。仕方なくエリルの背に手を当てる。彼女も屈み魔法の発動と同時にジャンプして飛距離を伸ばそうとする。
「そよ風よ我が手から吹け ブリーズ」
彼女の体は暴風によって力強く加速しその勢いで彼女も力の限り高く飛ぶ。思いつきの案は意外なほど砦をあっさりと越えて敵兵の驚愕の声と共にファリーシアの雄叫びが聞こえる。飛び散る敵兵の体と血潮が門へ近づき遂に跳ね橋は降ろされた。ドゥガンもエリルも声を上げて突撃する様子を見てベリアスも剣を抜き声を上げガインギルと共に後を追う。その様子を見た兵も遅れて我先と突撃していく。全員にかけれるか心配だったが私の見る限りではシールドをかけて戦況を見守る。
ベリアス皇子の突撃による士気の上昇と彼の剣技の冴えガインギルの采配もあり兵士も効率良く動く。当然ながらドゥガンにエリル、そしてファリーシアの一見すると雑に見える達人の域にある我流の剣技により敵兵の塊が次々と消し飛んでいく。大太刀の扱いは天使の群れと上位天使との戦闘で既に慣れていたようだ。
この攻撃を当然ながら予想していなかった敵兵の殆どは始末し数名を逃してしまったものの大成功に終わった。シールドの効果も申し分なく負傷者は数名といったところで今後の行動に支障が出るほどではない。今後は北の砦から挟撃を仕掛けることも出来るだろう。ベリアスはピルスに魔導具による遠距離通信で作戦の成功を伝える。
「北の砦は落としました。しかし先は狭い道のようで大軍での行進は無理ですね」
事実だ。もちろん敵はこうなることを考えてではなく単純にここまで掘り進めて砦の建設を秘密裏に進めたのらしい。結果的にはこちらの軍の動きも制限させられている。
夜になり敵兵の後処理に追われている丁度そこへ砦の奪還を企む精鋭部隊と思われる全身鎧と大盾に槍を持った重装歩兵たちがゆっくりと迫ってくる。またどうしようかと悩むベリアスを見て三人は私に視線をやりエリルは無茶を言う。
「虹の奴でさ、ぶっ飛ばしちゃえばいいんじゃない」
二人もあれならと思うもあれは魔王を倒すために無理やり編み出したもので幾ら敵とはいえこの地形がどうなるか分かったものではないので流石に即却下した。が、代わりにファイアボルトで手を打つことにした。ファリーシアに全て頼るわけにもいかない。丁度、直線上に敵がいるのだから魔法で狙い放題だ。
虹の矢の要領でファイアボルトの質を高める。炎の矢でなく火竜のファイアブレスを凝縮したような炎の槍。崖から落ちて建物を警備ゴーレムごと薙ぎ払ったのを思い出しあの時のイメージを更に内なる魔力で固める。私としては単に詠唱せずに発動する威力の減衰を補うものだった。敵は魔法による攻撃と即座に見抜き盾で隊を覆いスクロールを放り投げて半透明のシールドを作り出す。どうやら対魔法用の盾らしい。
「ファイアボルト!」
手の平から放たれたものは最早、矢でも槍でもなかった。ファイアブレスをイメージしたせいか炎の極太レーザーとなって狭い通路を瞬く間に溶かし対魔法用の盾も敵兵の分厚い盾も全身鎧も全て焼き尽くしながら突き進む。ある程度の軍を動かすのに十分な通路が出来たと同時に遥か後方で敵本隊を通り魔的に薙ぎ払っていったファイアボルトは更に多くの敵兵を飲み込むように上空に円柱状の爆炎を作り出した。
「ちょっとやり過ぎたかのう」
茶目っ気を出してみるもドゥガンにエリルとファリーシア以外はその圧倒的な威力を目にして驚愕している。今回ばかりは常にへらへら顔のベリアスも想定外の驚きだったようだ。彼らの目には冴えない地味なローブを羽織った爺が手の平を突き出し聞き取れない言葉を発すると極太のレーザーが出たということそれに驚かない三人の仲間たちだ。
「やっぱり爺の魔法は凄まじいな」ドゥガンは私の肩を叩き褒める。
「全くだ」ファリーシアも感心するように頷く。
「もう一発撃ったらどうかな」エリルはまた無茶を言う。
そしてベリアスの元に魔導具による通信が入り何事か問われる。
「あれは何ですか、貴方はどんな化け物を連れてきたのですか!」ベリアスは気力を振り絞りへらへら顔と口調を取り戻してどうにか応答する。
「あれは、私が雇った私兵の中にいた魔法使いによる攻撃ですよ。こちらにも損害が出ちゃいましたか」
通信からピルスが絶句している様子が分かる。ベリアスも本音を言えばこんなことになるとは思っても見なかったと言いたいところだろう。
「損害はありません。夜ですし皆退いています。しかしあのような大魔法を発動するのなら事前に知らせて下さい。こちらがどれだけ混乱しているか分かるでしょう」
敵の大魔法が暴発でもしたのかそれとも天災のような魔獣が現れたのかといった声が後ろで聞こえる。ファイアブレスをイメージしたのが悪かったかそれとも魔力を思った以上に込めすぎたかと悩む。この体に眠る魔力の引き出し方、それに手加減の仕方を覚えないといけないと思うもどこで試しても駄目なようでこれから手探りでいくしかないかと諦めて通信のやり取りを眺める。一通り文句を言い合い通信が終わる。
「交代の兵を向かわせるそうです。その後は帰ってこいって言われました」
どうにか笑顔で私たちと兵に向かって告げる。兵たちにとっては奇抜すぎる作戦とその後の異常な魔法があったにせよ作戦の終了で一時帰還し休息も出来るため全員が喝采をあげた。月が少し動いてから砦前にポータルが出現し他の兵と入れ替わりになって戻る。
その後はピルスのお説教が待っていたがベリアスが雇用主だと言って全て押し付けた。私たちは離れたところで地面に寝転がり遠くから聞こえる喧騒に背を向けて休む。日が登ろうかというところで目を覚ますと目の前には何時ものへらへら顔はどこへやらぐったりと疲れたベリアスが死んだ目をしながらこちらを見ている。寝ているわけではないようで起きたのを確認してから愚痴をこぼす。
「あれからですねえ、ずっと怒られたんですよー。毎回何かしらで怒られて慣れてたんですけど、本気で怒ったのは初めてみましたよー。お爺さんの魔法のおかげで伏兵の準備やこれまでの策が台無しだってねー」
うつろな目で感情が入ってない。批判しているというよりは誰かにどうすることも出来なかった思いを伝えたいだけのようだ。他三人は気づいてないフリでなく本当に寝ている。
「それじゃ、今後の作戦や兵の再配置もあるのでー」彼は一息つくと立ち上がりふらつきながら去っていく。
その後聞いたことは私のファイアボルトによって敵軍は混乱して大きく後退し皇国軍は前線に進行できたものの必要以上には踏み込まず敵が置いていった砦の増改築作業という地味な仕事が続いている。その間は皆全くやることがなく日がな一日それぞれ散歩したり素振りをしたり菓子を食ったり飲んだりと退屈な時間がすぎていく。ここに来てから一月が経ったかというところにようやくベリアスが現れた。あれからまともに顔も見てなかったので仕事かと思ったのだが違った。蛮族の被害が思ったより大きかったのか目立った行動がなく膠着状態のようで一月早いがお役御免になり帰れるようだ。
「僕としても計算違いでしたが総合的に考えればこちらの被害は全くなく戦線を上げれて皇国は盤石。敵は攻めてくる気配もない。という事で依頼完了です。帰りましょ」
何時ものへらへら顔に戻っていて懐から既に書いていた完了書をドゥガンに渡す。報酬の欄にはプラチナランクへの昇格と無期限の皇国カードとある。これは何かと問うと皇国領と友好国内で使える旅の際に発生する諸経費、宿代や装備品、ポーションやスクロールにマジックアイテムの購入費を常識的な範囲で皇国が支払うことを証明するカードのようだ。マジックアイテムで仮に落としても持ち主の懐に戻るという。カードは戻ってからすぐに発行するそうだ。ベリアスは既にポータルも開いていると急かす。
ポータルは監獄の地下が映し出され我々は無事戻ってきた。
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