03

「なぁ、白乃。さっきのテレビの事故だと思うか?」

「車が暴走ってヤツのこと?」

「そう。なんか引っかかるんだよな……しっくり来ないっていうかさ。聞いていて、違和感がある」

「違和感、か……」


 白乃はそう言うと、考えるような仕草を取る。すると、すぐに話を切り出してきた。


「でも、そういうのってよくあるんじゃないかな。精神的にも、心情的にも。

 例えば、昔にあった出来事や見たものとを無意識に結びつけて、相違部分に違和感を感じているとか。憐が感じているのはそういう事だと僕は思うよ」

「……そういうものなのか?」


 いいや、と白乃は首を横に降る。


「あくまでこれは、僕一個人の見解だからね……選択肢のうちの一つだよ」


 そう呟くと、少し真剣だった顔を緩ませて微笑みながら言ってきた。


「驚いたよ、憐。案外オカルトチックなことに興味があるなんてね」

「別にそういうことじゃない。なんとなく気になった、それだけだ」

「ふ〜ん。ま、憐がそれでいいならいいけどさ」


 白乃は拗ねるようにしながら、湯呑みのお茶をすする。

 それにしても、違和感というものはすぐには拭いきれないものがある。不意に私は白乃に問いかけていた。


「もしも偶然に起きた事故じゃなくて、故意に起こした事故だとしたら。ヒトがヒトを襲うワケってなんなんだろうな?」


 さあね、と白乃は切り出してきた。


「その人にはその人の気持ちがあるからね。僕はその人ではないし、意思共通だって出来ないから。僕はなにも分からないよ」

 

 とても曖昧な答えが返ってきた。

 どうやら簡単には答えの出せない質問をしてしまったようだ。

 煮え切らないが仕方ないだろう、きっと白乃の答えは正しい。


 ──当たり前のことを、当たり前のように言う彼はいつも、正しいのだから。

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