6.秘密の研究室
マンモスは、博物館の中にある一際大きな部屋に、かばん達を案内した。そこの扉にも、また厳重に鍵がかけられていたのを、マンモスは開けた。
「これって……!」
部屋の床一面には、これまでニホンオオカミが、マンモスに頼まれて浜辺で拾い集めてきたガラクタが、一面に敷き詰められていた。
「あなたがこれまで、あの浜辺で集めて来てくれたもの。それから、カモメが、海の上から私に持って来てくれたものよ」
マンモスは、床一面に散らばるガラクタの一部を拾い上げた。
「なるべく、軽くて、丈夫そうな物を集めて来るように頼んでいたでしょう?コレを使って、私は空を飛ぶ為の物を、ずっと、ここで作ろうとしてたの。オオウミガラスの夢を、叶えてあげたくて。でも、なかなか上手くいかなくって」
「そうだったんだ。でも今ならきっと上手く行くよ。私もいるし、かばん達もいるし!」
マンモスとニホンオオカミは、かばん達を見た。
「任せるのだ!かばんさんとこのアライさんがいれば、何事も100点満点、うまく行くのだ!」
「アライさんがそのうちの何点かはわからないけどねー」
「フェネック!?」
アライグマとフェネックのやりとりを見て、みんな笑った。
「ねえかばんちゃん、かばんちゃんの紙飛行機。アレも空飛ぶよね?」
サーバルが、かばんに聞いた。
「うん。でも、そんなに長くは飛ばないよ。上手く風に乗せられれば、少しは長く飛べるけど」
「紙飛行機?それって何?」
ニホンオオカミが、かばんに聞いた。
「あ、紙飛行機っていうのは……」
かばんは、背中のリュックサックから、一枚の紙を取り出した。そして、それを器用に折り畳んで、あっという間に、紙飛行機を作った。
それから、その紙飛行機を前に向けて投げた。紙飛行機は少しだけ飛び、緩やかに着地した。
「こんな風に、紙を折って作って飛ばすんです」
「すごい!こんなの初めて見た!ねーねー、作り方教えて!」
ニホンオオカミが、尻尾を大きく振りながら、かばんに食いつくようにしていた。
マンモスは、床に落ちた紙飛行機を拾い上げた。
「この形……似たようなのを何処かで見たような……」
「わー!すごい!本当に飛んだ!面白い!」
ニホンオオカミは、マンモスが考えている後ろで、かばんに紙飛行機の作り方を教わって大はしゃぎだ。
「ねーねー、これって、でっかいの作っても飛ぶのかな!もしそうだったら、みんなで乗ってみたいよね!」
ニホンオオカミのその言葉に、マンモスはある事を思い出した。それから、本棚をものすごい勢いで漁り、一冊の本を取り出して、ページをめくった。
「これ!これだわ!」
かばん達は、マンモスが開いた本のページを覗いた。そこには、紙飛行機によく似た形をした物が描かれていた。
「ハンググライダー……?」
「そう。私もまだまだね……。ずっと研究をしてたつもりが、いつも頭のどこかではあの子の事ばかり考えて、大事な事を見落としてたんだわ。これは、あの動く絵の中に出てきた物よりも随分簡単な作りのものだけど、でも、確かに空を飛ぶことができるものなの。その紙飛行機みたいに、上手く風に乗ってね」
「すっごーい!本当におっきい紙飛行機みたい!じゃあ、これを作ろう!」
サーバルも、賛成した。
「必要なのは、軽くて、それなりの長さのある丈夫な棒と、それから、大きくて軽くて、薄い、丈夫なものね……」
「棒ならここにいっぱいあるけど、大きくて軽くて薄い丈夫なものってどんなの?紙じゃきっとすぐ破けちゃうよ」
マンモスとニホンオオカミは、頭を悩ませた。サーバルは、かばんの方を見た。
「かばんちゃん、なんかいいアイデアない?」
「一つだけ、それに当てはまりそうなものなら、さっき見たけど……上手く行くかどうか」
かばんのその言葉に、マンモスとニホンオオカミは、思わず飛び上がった。
「何々?教えて教えて!」
「すぐにでも準備するわ!」
かばんは、やる気に満ちている二人の迫力に、圧倒されるばかりだった。
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