第150話 数々の予言

「それでは、日本人が選ばれた民の理由を言います。ちょっと時間かかってもいいですか?」

「大丈夫です。みんな聞いています」

「まずは、みなさんは日月神示ってご存知ですか?」

議場全体を見回して摩耶が問う。

「さー?」

「ひつき・・・知らんなー」

「何だそれ?」

楢崎以外、全員が全く理解できない顔をしている。

「これで国会議員とよく言えたものだ」と摩耶は思った。

「戦前の1943年に岡本神明によって書かれた予言書です。彼は太平洋戦争よりもっと大難の『大峠』のあと光の民である我々日本人が、ユダヤの神との戦いを制してその後を平和に導くと書いてあります」

「くだらん、世迷言だ」

「日本人だから日本をよく書いたまでだ」

「違います!あなたたちが忖度しているあのアメリカ人のアインシュタインも同じことを言っています。『蜜蜂がこの世からいなくなった後、世界に滅亡が来る。しかしそれを救うのが日本人だ。神よよくも世界に日本人を存在させてくれた事に感謝します』と書いています」

「ただの都市伝説だろう」

「ここは国会だぞ、そんな戯言を言う場ではない」

「これでもまだ足りませんか?アメリカ先住民族のホピ族の伝承を伝えます。彼らはその予言の命中率の高さから、かつて国連総会の場に出席して発言を求められた経緯があるほど尊重されています」

「そのホピ族とやらが何を言っているのだ?」

中州根が問い正す。

「平和の民と呼ばれている彼らは『この世はすでに3回滅んでいる。すべてが行き過ぎた物質文明のためである。今回の文明は4回目であり、それもまもなく終焉が来る』との事です」

「終焉が来たら困るだろう」

「それを救うのが日が昇る民、すなわち日本人だと書かれています。いかがですか?」

「きみはオカルト雑誌『モー』の読みすぎだ」

「正気とはとても思えないな」

「わかりました、では最後にあなたがたの1番恐れるアメリカのCIAが隠したがるオアスペを聞いてください」

「オアスペ?」

「またまた変なのを持ち出したな」

「どうせオカルト本だろう」

「オアスペは1881年、アメリカ人の歯医者ジョン・ニュー・ブローが天からの啓示で自動書記したものです」

「その大昔の歯医者が何と言っているんだ?」

「すべての破局の後に、日本人が救世主として立ち上がると言ってるんです。当時の日本の情報など何も届かない地方出身のアメリカ人がですよ」

「つまり、何が言いたいんだね?」

「まだ気づきませんか?すべての予言が、物質文明がそろそろ終わりを告げ、その後に日本人が救世主になると同じ事を言っているんですよ。これはもう偶然ではないでしょう!」

摩耶の最後の声は悲鳴に近かった。

「長々とご高説ありがとう。残念ながらここは国会で、現実を議論する場所だ」

うんざりしたような顔で中州根が答えた。

「総理!まだわからないのですか?彼女が言いたいのはこの大変革期における日本人の役割と責任です。一生懸命それを伝えようとしている彼女の真意を汲んでください」

広田が机を叩いて熱弁する。

「わかった、わかった。いずれにしても10日後に、全ての議員が瞬間移動を経験してからもう一度論議しよう。どうやら今日の国会を聞いているアメリカのトランポリン大統領とロシアのフルチン大統領、それと中国の集金兵からの電話が入ったらしい」

秘書官からそっと渡された3枚の紙を持って中州根が「やれやれ」という表情で立ち上がった。

「それではこれを持ちまして臨時国会を散会します」

議長の声で、長かった国会の証人喚問が終わった。



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