第149話 日本の誇り
「何から話せばいいかしら?」
「質問が複雑になってすまない。破格の力を持ってしまった摩耶さんから今の日本政府に対しての要望をお聞きしたい」
「はあ・・・」
またもやカンニングペーパーにない質問に摩耶はしばらく考えた。
「あの・・・私は今学級委員をやっています」
「ん?」
方向違いの答えに広田が驚く。
「学級会はそもそもクラスで発生した問題を解決するところです。もちろん決議は多数決です」
「はい・・・」
今だに摩耶の質問の真意を測りかねている広田。
「国会も同じですよね。国内の問題に優先順位をつけて議論して、多数決で解決するところと習いましたが」
「む、無論その通りだよ。それが何か?」
「昔からジャーナリストの父から、テレビの国会中継を見るようにと言われてましたが、今はさっぱりその気になりません。理由は北朝鮮や、中国の脅威、コロナの問題、先ほど言いましたが若い世代のいじめや引きこもり問題など喫緊の課題が山積みなのに、身内の賄賂や汚職などスキャンダルの話しかしていないからです。場合によっては居眠りしている議員も見ます」
「うーん、一言もないな・・・」
「例えて言えば、家がぼうぼう燃えているのに間抜けに火を消さずに夫婦喧嘩をしているみたいです」
「そんな風に見えているのか・・・」
「私だけではありません。周りの友達連中も政府に関しては良い悪いではなく、そもそも何も期待していません」
「これは手厳しいな・・・」
「いいですか、今まさに黒船が来たんですよ。目を覚ましてください。6000年に1度の大変革期が来ているのです。しかもこれを使えるのは私たち日本人だけなんです」
「しかしありがたい話だが、なぜ日本人だけなんだろうか?」
「それは簡単です、私たちは選ばれた民族だからです。言霊を使えるし、虫の音を『声』と認識できる唯一の民族だからです」
「だから、どうせよと・・・」
「日本人の誇りを取り戻してほしいのです。私たち子供は難しい知識はありませんが『本質』をすぐに見抜きます。今の大人たちは怖いものから逃げるばかりで、誇りや尊厳を何ら感じないのです。だからそんな大人に抵抗して部屋に篭ったり、対話をしなかったりと精一杯行動で示しているのです」
「はっはっは、よう言うたのう。こりゃ中州根も形無しじゃのう」
「参ったなあ・・・あの大人しいふーちゃんにこんなパワーがあったとは・・・」
モニターの前で2人が感心した。
「は、話を整理したい。先ほどの『選ばれた国民』について詳しく聞きたいのだが」
ハンカチで汗を拭いながら、なんとか広田が反論した。
しかし一瞬、広田が目配せをしたのを摩耶は見落とさなかった。
これは「もっと僕を遠慮なく攻撃してくれ。議員全員に考えさせたいから」の合図と理解した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます