第147話 楢崎あかねの決意
場面は国会
「私の質問は以上です。摩耶さん、先ほどからスマホが鳴ってますが大丈夫ですか?」
「はい、失礼します」
チラッとかたわらのスマホを確認する摩耶。
「楢崎さん、カタカムナ教室からの最新情報です。たった今4人がミスタルノタマを完成させたみたいです」
「本当ですか?すごい速さですね」
「はい。このままの勢いですと早い組さんは今週中にでも全員が完成させると思います」
「そうね・・・」
しばらく考えこむ楢崎。
「議員のみなさん。私はただ今から文部科学大臣として宣言します!」
「「何だ、何だ?」」
急な楢崎の宣言にざわつく議場。
「私は文部科学大臣として正式にミスマルノタマ教室を支持します。さらに今後は公立、私立を問わずに同じ教室を全学校内に設置していくつもりです」
「そんな!独断すぎるぞ!」
「そうだ、総意を汲むべきだ!」
「何のための国会だ!」
蜂の巣を突いたようにワイワイ騒ぐ議員たち。
「静粛に!楢崎君続きを」
議長が進行を促す。
「摩耶さん、私からの質問は以上です。この場を借りて文科省に言いたい事があれば何でも言ってください」
カンニングペーパーに無い質問に摩耶は少し考えた。
「あの・・・いじめ問題に関してですが。楢崎さんは全国で1年間に自殺するいじめられっ子の数をご存じですか?」
「もちろん管轄ですからよく知っています。いじめの件数は全国の小中高でわかっているだけで55万件、自殺の件数は400人と聞いています」
「はい、400人ということは毎日1人が自殺をしてるんです。つまりこうやっている間にも明日死のうかと真剣に考えている子供がいるんです」
「そうなの、痛ましい数字はよくわかってるわ。文科省としても、なんとかして現場での教師による監視体制を強化して自殺を減らそうと考えているとこなの」
「発想を変えてください。その子たちを同じ環境下においていじめの監視を強めるのではなく、明日からは違う学校にさっさと変えて登校させるのです」
「なるほど・・・このシステムで瞬間移動すれば可能よね」
「極端な話ですが、北海道でいじめられてる子は明日から沖縄の学校に通えます。今までは親の仕事や経済的理由により『転校』という選択肢がなかったけれども、これからは誰でもが好きな街の学校に転校できるの」
「なるほど。でもその子たちの移動にはミスマルノタマの発動が条件だったわね」
「そこはご心配なく。幸いな事に、いじめられっ子は『心がきれいな子』が多いんです。これで第一条件はクリアですよね。私も実は昔いじめられてましたからよくわかります」
「でも、そもそも気の弱い子だから移動した先でもまたいじめられることはない?」
「逆ですよ。瞬間移動なんていう桁違いの能力を持った子をいじめるなんてありません。むしろみんなから崇拝されますよ」
「よくわかりました。素晴らしい提案をありがとうね」
「未来ある子供の命以上に大切な事がこの世にありますか?是非実現させてください、お願いします。それとテレビで今これを見ているいじめられっ子のみなさん、どうか安心してください!絶対に自殺なんて考えないでね!以上です」
「有意義な時間をありがとう。議長、私の質疑タイムも以上です」
楢崎が一礼してゆっくり質問台から去っていった。
「続いての質問者、広田幹事長」
議長が広田を指名した。
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