第145話 アメリカの策略
「アメリカの責任?」
中州根総理の取り巻き議員達がいきなりざわついた。
CNNカメラがさっと摩耶をズームした。
「そうです。日本国民に対して巧妙に仕組まれたアメリカ政府の策略のせいです」
「よくわからないわ。その策略を詳しく教えてください」
「楢崎さんなら簡単に理解できます。カタカナの『ヤ行』です」
「ヤ行・・・ヤヰユヱヨね」
「はい、楢崎さんはいい発音です。どうやら戦後アメリカのGHQの中に日本語の持つ力を知っていた人がいたようです」
「日本語の持つ力?」
またもや議場内がざわついた。
「はい。日本語の力の恐ろしさを知っていた彼らは戦後の日本人の弱体化を狙って私たちのヤ行から2文字を抜き取ったのです。よほど日本人が持つ言霊の力が怖かったのですね」
「そんな!たかだか2文字抜いた程度で戦後の日本を支えてくれたアメリカを悪く言うつもりなのか?」
中洲根が立ち上がって怒鳴る。
「静粛に」
「はい。たかだかと言いますが、ウタヒの中に
『ソラニモロケセ
ユヱヌオヲ
ハエツヰネホン
カタカムナ』
とあります。この『ヰ』と『ヱ』の発音が上手くできなくなったのが障害になります」
「やはりね・・・文部科学大臣の私が言うのも何ですが、私もそれには気づいてました。ですからもう一度学校教育の中で『ヱ』と『ヰ』を取り戻して言霊力をつけよう!とかねがね言ってきましたが口の悪い議員は『文部非科学大臣』などと言って罵りました」
キッと議場を睨む楢崎に何人かの議員が目を逸らすのが見えた。
「話を戻します。早い組の人たちは心が純粋でかつ、この2文字の発音が正確で綺麗なのです」
「わかりました。勉強になったわ。しかし早い組が半数近くあるということは『ヱ』と『ヰ』の発音ができる学生が相当数いるということね」
「はい。幸いうちの高校の演劇部と放送部は歴史があり昔気質なのか、この2文字の発声練習を意識して毎日やっていたようです。それと生徒ではないですが綺麗な発音をする国語の先生もこのクラスにいます」
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