第144話 文部科学大臣 楢崎あかね

ドアを開けた議場は未だに興奮冷めやらない500名の議員の声で騒然としていた。

「ご静粛に、それでは午後の質疑に入ります。文部科学大臣 楢崎あかね君」

「はい」

さっそうと質問台に進む楢崎。

証人台の摩耶に軽くウインクした。


「それでは質問に入ります。早速ですが、さきほど見せていただいたミスマルノタマを出せるようになるためには何が必要なんですか」

約束通り大学ノートと同じ質問が出たので摩耶は安心した。

「はい、まずは6000年続いた物質文明の終わりとこれから始まる精神文明を信じる心です」

「なるほど。では物質文明と精神文明の定義を詳しく教えてくれませんか?」

「はい、物質文明とは『目に見えるもの』すなわちお金や貴金属、土地などをたくさん所持した者が偉いとする文明です。反対に精神文明は所有しない共有の文明です。そもそも所有しないのですからそこに争いはありません」

「なるほど。それは素晴らしい世界観ですね。現行の資本主義は聞こえはいいですけど『争って所有』する文明というわけですね。それだけですか?」

「次にカタカムナ文明が残したウタヒと呼ばれる簡単な呪文を覚えることです。この時に疑いや迷いが少しでもあってはいけません」

「なるほど。ではそのウタヒを教える教育に関してはどう考えていますか?」

「はい、現在影松高校の中の課外授業で放課後に行っています。」

カンニングペーパー通りなので答えやすい。

「公立高校ですでにやっていると。これは校長の許可が下りていますか?」

「はい許可どころではなく、校長先生も参加しています」

「現行、何人くらいが参加していますか?また初めてどのくらい経過してますか?」

「3週間前からスタートしています。2クラスで100名です。覚えの早いクラスとゆっくりのクラスに分けています」

「その中ですで既にミスマルノタマを出せた人は何人ですか?」

「今のところまだ2人ですが、たぶん今週中には10人くらいに増えると思います」


「今んとこ順調に行ってまんな」

「楢崎さん、さすがによく理解してるんだナ」

「そうね、摩耶ちゃんこのまま乗り切ってね」


「参考までに、さっきも唱えていたウタヒをもう一度大きな声で聞かせてもらえませんか?」

「わかりました。ヒフミヨイ マワリテメグル・・・」

ウタヒを先ほどより大きな声で唱える摩耶のまわりがまた輝きだした。

「おおっ!」

2回目のミスマルノタマの出現に驚く議員たち。

「ありがとう、ところで質問を変えます。先ほど教室が早い組と遅い組に分かれたと聞きましたが、何がその差を生むのですか?」

「言霊の質です」

「言霊って言葉ひとつひとつにパワーが宿るあの言霊ね」

「そうです。綺麗な心を持つ人の発する言葉には言霊が宿っています」

「なるほど・・・綺麗な心が無い人、すなわち所有欲や争う心があればダメなのね」

「はい。それと・・・」

「それと?」

摩耶が腕を組んで聞いている中州根総理とCNNカメラをチラッと見た。

「アメリカの責任でもあります」




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