第142話 国会やりとり3
中州根総理が質問台に進んだ。
「摩耶さん、今日は遠路はるばるありがとう。日本国代表の総理としてお尋ねしたいことがある。国会とは『日本国の国益』を討論するところでもあるが防衛、つまり国家の安全保障に関して質問したい」
「わかりました」
大学ノートをめくる摩耶。
「先ほどの瞬間移動の原理も理解した。神社間での移動もわかったし、ミスマルノタマが必要なことも理解した。そもそもこのシステムで海外には行けるのかな?」
「そら来た」
と心の中でつぶやく摩耶。
大学ノートの次のページをめくる。
「はい、古代から各国の首都は磁場の強い場所が選ばれたそうですので、日本国内のように網の目のようには行きませんが可能です」
「すると行けるということは逆に海外から武器や爆発物も簡単に入ってくることになるな?」
「いえ、ゲートに不審物を感知して通れない処置ができますので安全です。空港のX線検査ゲートをイメージしてください」
「なるほど・・・しかし武器・爆発物はなくても大量の人間、すなわち軍隊が移動することは可能だな?」
ちらっとBBCやCNNのカメラを意識して中州根が尋ねる。
「軍隊かどうかは別にして、多数の人間は送り込めます。その証拠に縄文から弥生時代に変わるときに長野県諏訪地方にユダヤ人が大挙して押し寄せたと聞いています」
「ご存じのように我が国は基本、難民の受け入れを許可していない。それは悪意を持った海外の人間を入国させることがいかに国民にとってリスクかを知っているからだ」
「お言葉ですが、そもそも善意を持った人にしかミスマルノタマは発動しません」
「しかし1人ミスマルノタマを発動できる人がいれば何人かは連れていけると聞いたが?現に広田君も今日、その方法で神戸から来たんだろう?」
その質問に広田がうなずく。
「ミスマルノタマに悪意がある人は入れないよう調整ができます」
「それを果たして信じていいのかね?」
「そ、それは・・・」
「それと悪意はなくとも、海外から病原体を伴った人が入ってくるリスクはどうかな?」
「移動システムに病原体データを入れて排除できると聞いています・・・」
「それも果たして信じていいのかね?」
「それは・・・信じてください・・・」
「あかん、なんかやばい雰囲気になってきたやんけ」
「せっかくいいところまで頑張ったのに押されてるんだナ」
「摩耶ちゃん、がんばって。ここが正念場よ」
「議長!」
楢崎あかねが手を挙げる。
「楢崎あかね文部科学大臣」
「総理、相手はか弱い女子高生ですよ。それと今日は彼女を論破するために招待したのではないはずです。国家としてこの新システムをどう対処するかが主眼でしたよね」
「もちろんそうだ。そのために細かな質問をしているんだが・・・」
「いずれにしても証人は初めての国会での質疑応答で相当疲れているようなのでここで一旦議会の休憩を提案します。議長いかがですか?」
「わかりました。楢崎君の提案を許可する。ここで一旦休会とし、午後3時からまた再開します」
この議長の一言で臨時国会は休憩となった。
・」
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