第141話 国会やりとり2

「摩耶さん。先ほどの出鱈目とかまやかしの言葉は撤回します。しかし、国会とは『日本国の国益』を討論するところです。そのためふさわしくない質問もするかも知れないが理解してほしい」

山崎が続ける。

「わかりました」

摩耶は鞄の中から、昨日中居先生にもらった模範解答用の大学ノートを取り出して開いた。


「まずはこの瞬間移動方法はだれからの伝授なのですか?」

「カタカムナ人です」

「そのカタカムナ人とはどういう存在なのですか?」

「12000年前から日本に来て、農耕から始まり、その都度われわれに文明を教えてきた民族です」

「俄には信じられない話だが、その民族は我々に『敵性』はないのかな?」

「敵性・・・といいますと?」

「つまり、人類に対して無償で文明を教える彼らは。我々の味方かどうか聞いている。それに無償で教える意味が分からない。何か裏を感じるのだが」

「あの・・・それは考えすぎです。話を例えると、ハイハイする赤ちゃんに歩き方を教えるお母さんに敵性はありますか?そしてお母さんは赤ちゃんに教えた代金を請求したりしますか?」

「なんと、彼らは赤ん坊に対する母親という存在なのか・・・わかりました。それも理解しましょう。それでは陸海空の輸送運輸を預かる運輸大臣として質問したい。瞬間移動のメカニズムを教えてほしい」

「それは基本的に磁場を利用しての移動になります」

「磁場を使った移動とは具体的にどういう事かな?」

「日本国内の神社は磁場の強いところに建てられています。各神社の鳥居には目に見えないゲートがあり、行き先を指定できる固有の周波数の水晶を持って鳥居をくぐると瞬間に移動が可能です」

「これは途方もないシステムだな。その移動は日本全国どこでも可能なのかな?」

「はい、日本各地には古くから極めて磁場の強い土地に神社が建てられました。古代の人々には磁場の強い場所とそうでない場所が見極める能力があったんです。神社間は自由に行き来できます。例えるなら神社は駅だと思ってください」

「なるほど、駅か。しかし移動に際しての安全性はどうか?」

「現行の飛行機や自動車の移動による事故率を考えるとゼロです。さらに移動時間もゼロです」

「素晴らしいシステムだな。それでは端的に聞くが、そのシステム国家、我が運輸省が管理できるものなのかな?」

「管理?なぜ便利なシステムに国家の管理が必要なのでしょうか?」

「むろん安全性の問題だ。場合によってはライセンスや許可を与える必要もある」

「あの・・・誰が誰に許可を与えるのでしょうか?」

「決まっている。国家がミスマルノタマを扱える人達にだ」

「それはナンセンスです。今からミスマルノタマを扱える人はどんどん増えていきます」

「だから、それをアニメにあった『国家錬金術師』みたいなライセンス制にするイメージだな」

「はあー・・・」

大きなロボット型の弟を連れた金髪少年を思い出した摩耶は深いため息をついた。


「議長、少しいいかな?」

腕を組んでだまってやりとりを聞いていた中州根総理がゆっくりと手を挙げた。

「中州根総理」

議長が発言を許可した。


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