第140話 国会のやりとり 1
話を国会に戻す。
「つまり、きみが言いたいことは・・・今回の株価や原油の暴落は『来るべくして来たもの』ということか?」
山崎運輸大臣が続ける。
「はい、うちわの次に扇風機、扇風機の次にクーラーと新しい技術は古いものを駆逐します。新らしい技術が出たときは最初は半信半疑で使いますが、その価値は常に民衆が判断します。損をしたとか、やられたとかワイワイ騒いでいるのは、その古い技術から甘い汁を吸ってきた人たちです」
「僕のたとえ話を使ったんだナ」
「ほえー、うまいこと話しまんなー」
「しー!」
「つまり、きみの新しい技術は、われわれの古い技術や考え方を駆逐すると言いたいわけだな」
「そうです、もう特定の誰かがエネルギーや資源を独占して敗者を作るような考え方を改めるべき時代が来たのです。そのことをまず理解してください」
「議長!」
若い頃は相当美人であったことが察せられる、清楚なスーツ姿の女性議員からサッと手が挙がった。
「楢崎あかね。文部科学大臣」
「摩耶証人の言うように、もうこの技術が『本当かどうか』の議論ではなく『本当だとして』の我が国の対処の仕方を前向きに議論するべきです。そうしないと全てが時間の無駄です」
「山崎運輸大臣」
着席した楢崎を見て、議長が山崎を再び指名した。
「わかりました。では質問を変えましょう。今からこの技術を『本当だとして』話をしたいが、小細工ができないこの場で、そのミスマルノタマとやらを我々に、ぜひ見せて欲しいがいかがかな」
「今度は小細工なんだナ」
「絶対アホやー!」
「しー!」
「はい、そんなのは簡単です。今からお見せしますから、みなさんもよく見ていてください」
摩耶がいつものポーズを取り、目を閉じてウタヒを唱えだした。
「ヒフミヨイ・・・」
摩耶の周りが光り輝き、途端ににザワめく議場内。
各局のテレビカメラが一斉にズームして摩耶のアップ画像をお茶の間に届けた。
「富士子頑張って・・・」
摩耶の自宅内にてテレビの画像に手を合わせて祈る母。
しばらくすると摩耶の周りだけでなく議場内全体が一気に明るくなった。
「おー!」
と会議場内がざわめく。
「どうぞ、みなさん遠慮せずに私の周りに集まって実際に手で触れてみてください」
摩耶のこの言葉で議員たちが降りてきて、おそるおそる輝く光の中に手を差し込んだ。
「なるほど。これがミスマルノタマか」
「温かいな」
「これが瞬間移動の条件か」
「みなさんいかがでしたか?これで信じてもらえましたか?」
めいめいの感想を述べる議員たちに笑顔で摩耶が尋ねた。
「や、山崎運輸大臣、今見たことを踏まえて質問を続行するように」
「わ、わかりました、それでは質問を続けます」
もう山崎の言葉からは以前の居丈高さは感じなかった。
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